■日経BP社 浅見直樹
吉田さんご自身はかなりアメリカの方で海外におけるソフト開発をご覧になった経歴をお持ちですけどどうでしょう。
■ソニーコンピュータエンタテインメント 吉田修平
私は2000年から去年まで、アメリカにおけるSCEのゲーム制作の責任者としてやってきました。
今は全世界におけるスタジオの責任者なんですけど、今でもSCEのワールドワイドスタジオの規模といいますか投資金額とかそこに関わっている人数の8割ぐらい、8割以上はアメリカとかヨーロッパのスタジオでの活動となっています。
そういう意味で私はここ10年近く、どちらかというと海外メーカーの目といいますか、日本の市場ですとか見てきた立場でして、我々アメリカですごいゲームができた、と思ってアメリカで100万本売れるぞ、というものを日本に持ってくると、2万本かな、と非常に厳しい、難しい。
一方で日本のユーザーさんの好むものと欧米のユーザーが好むものが、技術とか表現力が進むことによって、さらに違いがはっきりしてきて、日本市場で受けるものを作るには日本のクリエイターじゃないと無理だとはっきりしてですね。
一方で先ほど少子化とか言われていますけど、全体の市場の規模の比率でいいますと日本の比率が減ってきていると。
ですから私はアメリカにいました8年間というのは、ああ日本でゲーム作って無くてよかったと、気楽なことを考えていたんですけど、今はむしろ日本の制作の責任者としてやってまして。
じゃあ、日本でゲームを作って、これから業界におけるインパクトを与え続けるにはどうすればいいかを考え続けています。
一つには、今鵜之澤さんがおっしゃったようにですね、欧米、とくにアメリカのロサンゼルスですとか、ハリウッドのような、映画のような表現でゲームを作るっていうのは、やっぱりあっちの方が得意ですね。
日本でももちろん、クリエイターですとかチームですとか、そこで互角に戦われているところもあるんですけど、日本人が持つ強さというのは、業界の長い歴史の中でインタラクティブにおける強さといいますか、遊んで楽しいかというところのアイデアですとか、そこを突き詰めていく能力というのはやはり一日の長がまだあると思います。
ですから、いたずらに欧米で売れているものをやってみようというのではなくて、自分たちの強みは何か、何ができるか、そこで面白いものさえ作ればですね、すごくアニメ的な絵であったり、ローポリであってもですね、世界中でやっぱり受け入れると思うんですね。
ですから、そういったところを見極めながらやっていくのかなぁ、と自分たちの中では考えています。
■日経BP社 浅見直樹
昨年のこのパネルの時にですね、何人の方からかご意見をいただいたのはゲーム業界がもう一つ飛躍していくためにはいわゆるゲームの好きな人たちの集団だけでなくて、たとえば芸術家であるとか、数学が良くわかるとか、物理ができるとか、そういう新しい血が入ってこないといけないんじゃないかみたいな意見があったんですね。
そういう意味でどうでしょう、海外ですとそういう人たちっていうのを取りやすい環境にあるのでしょうか。
■ソニーコンピュータエンタテインメント 吉田修平
ものすごく楽ですね。探さなくても、この業界が伸びる、仕事がある、何か面白いことがありそうだというと、来てくれますね。
そういった専門家を非常に集めやすい。
専門家集団を束ねるコアなところは、でもやっぱりゲームの経験があるディレクターであったりデザイナーであったりするんですけど、そういったチームを作りやすいという地の利といいますか、それはアメリカでものを作っている時は非常に感じました。
Part16に続く