■日経BP社 浅見直樹
和田さんは去年のこの場でも業界の未来については危機感をお持ちになっているというお話をいただきましたけど、1年経って強くなった方向なのか、この1年でそれは改善される方向に来ているのでしょうか。どんな風にゲーム業界に危機感を感じてらっしゃるでしょうか。
■スクウェアエニックス 和田洋一
足もとの心配は思われているほどないんですよね。ですから、どうしても物事を変えることはとてつもなくストレスがかかりますから、我々なんかも変えにくいところはございますよね。
問題がずーっと内包されているままになっていることはあるかもしれません。
先ほどの質問で行きますと、コンテンツのことはもっとも重要で、それは私もそう思っていますけど、皆さんおっしゃると思いますので、お客様、マーケットという議論と、ビジネスモデルということで行きますとですね。
マーケットに関してはゲームが子供だけのものである、というところではなくてですね、大人の娯楽として十分楽しめるとということをもっともっと真正面から認知してもらうということは重要だと思うんですよね。
エンターテイメントとしてわりとど真ん中に来ましたといったときに、大人のことを意識して作っているパブリッシャーって実はあんまりいないんですよね。
エロとかグロとかバイオレンスということじゃなくてですね、大人がちゃんと遊べるものというものを、お客様に対してアピールしなければならないと思いますし、我々の方でもそれを作っていくと、一夜にして対象マーケットが潜在的ではありますけど倍になるんですよね。
これはものすごく大きいですよ。これは我々もやろうと思っているんですけれども、なかなか頭が切り替わらない。
むしろ欧米の方が大人がゲームをすることがクールだと言われますんで、日本が一番ゲームというのは子供っぽいと思われているかもしれません。
ここは業界側ももう少し取り組むべきだと思うんです。
レーティングもその一環でして、大人向けのゲームを作るという議論と、青少年の健全育成とは別の話ですから、だから分離しましょうという話なんですよね。
全部子供に寄せるということではなくて、分離して両方とも成り立たせたいということで、社会的なインフラを作ろうとしているわけですよね。
これがまずマーケットに関して、ゲーム業界全体で考えるべきことなのかなと思っています。
それと、ビジネスモデルということでいきますと、基本的に何年か、十年か経ちますと値段というのは下がってきますので、最終小売価格が下がっていくと。その中で、開発コストが上がってくると。で、決定的に変わるのはメディアが変わった時なんですよね。前回も十数年前にマスクロムから光ディスクになった時に利益配分の姿が全然変わったんです。
それで実はものすごく大きな変化があったわけです。
今回それがネットワークにどのタイミングになるか、一気にいきませんから、段階的にいきますから、その時にどう配分が適正になっていくかというところを捉えられるかということだと思います。
このままたとえばですね、今の価格の下落圧力と開発費の高騰が10年続いたら業界が壊滅すると思います。
何らかの形で遊び方というコンテンツが出てくるのは実は収益モデルともリンクしていますので、収益のモデル自体にイノベーションがおこんないと、数年は持ちますけど、このままずーっとというのはかなり苦しいというのは事実だと思います。
Part7に続く