「SCEの提言 ~再成長への布石~」Part1 |
「提言」
今年はファミリーコンピュータ(ファミコン)が発売されてから20年目になるという。ファミコンが誕生して以来、急成長市場であると言われ続けてきたゲーム市場であるが、近年の市場規模の推移を見ると、すでに低成長期に入ってしまった感がある。どんな市場でも急成長を保ち続けるのは非常に困難なことであるが、ゲーム市場も例外ではなかったようだ。
だが、それをあまり快く思っていないのがソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)であろう。プレイステーション(PS)シリーズで覇権を握ったSCEは、市場拡大の恩恵を最も受けやすい立場にいる。逆に市場が停滞することは、SCEにとって不利益となる。
同社が主催する「PlayStation Meeting
2003」が7月29日に開かれたが、そこでSCE竹野史哉氏は現状のゲーム業界における問題点を数点、指摘した。具体的には「ビッグヒットタイトルの減少」「ゲームジャンルの偏り」「出荷時期の集中」などを問題として取り上げ、改善の必要性があると主張したのである。これらは、停滞気味のゲーム市場を何とか活性化したいと考えているSCEから出された、ソフトメーカーへの提言であると言えよう。
指摘された問題点の中で、ソフトメーカーが容易に改善できそうなものが「出荷時期の集中」であろう。他の「ゲームジャンルの偏り」や「ビッグヒットタイトルの減少」などは、SCEに要請されたからと言って、そう簡単に変えられるものではない。一タイトル当りの販売本数が多い「ビッグヒットタイトル」が減ってきているのは、もちろんソフトメーカー側の努力不足の面も確かにある。しかし、それはソフトを販売してしまった後の結果でしかない。ビッグヒットタイトルを生み出せる方程式があるのなら話は別だが、ゲームソフトは市場に出してみなければ売れるかどうか分からない。ソフトメーカーとしては売れなかったという結果だけを責められても、どうすることもできないだろう。
同様に「ゲームジャンルの偏り」が指摘されたが、市場が低成長化し、なおかつ開発コストも増大している現在において、ユーザーの受けがよいジャンルを選択するのは企業として当然の戦略である。それを変えるのは簡単ではない。
一方、「ソフトの出荷時期の集中」はこれらとは異なる。クリスマス商戦などの、ある一時期に多種多様なソフトが集中して投入されると、それらのソフト同士が競合しあい、最終的な販売が振るわないことがある。しかし、これは変えようと思えば、比較的容易に変えることが出来る。ソフトの発売延期などは良く聞く話だが、そのように発売時期は自社の都合によって変更が可能だからだ。ならば、ソフトメーカーは発売時期に関するSCEの提言を受け入れやすいと言えるだろう。
だが、ここで疑問が残る。SCEは今頃になって、なぜゲーム市場停滞の理由のひとつとして、出荷時期の集中を問題視するようになったのか、ということだ。この度のSCEが出した3つの提言をよく見ると、「ビッグヒットタイトルの減少」と「ゲームジャンルの偏り」の2つの問題は最近の傾向である一方で、「出荷時期の集中」はファミコン時代からの事例なのである。年間で最もゲームソフトが売れる時期がクリスマス前後なのは、今も昔も変わらないのに、なぜ今になってこの時期への集中を“問題”として取り上げるようになったのか。
そこには何か特別な意図があるのではないか。今回は「PlayStationMeeting
2003」から垣間見えるSCEの狙いを考えていきたいと思う。
参考…『GAME Watch』「タイトル収穫期に入り出荷本数の好調な伸びの反面に課題も期待の新作を5本紹介。「戦国無双」と「FF
XII」はタイトルのみ公開」(つづく)
(ライター:菅井) |
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