「リストラ
~ソフトメーカーの組織改革~」Part1 |
「市場拡大と伸び悩み」
近年、ゲームソフトの販売が伸び悩み、前年比マイナス成長が続いていた家庭用ゲームソフト市場だが、2002年は一転して3年振りに前年比プラスを記録した。『2002年の販売金額は前年比7.4%増の3490億円』(注1)となり、2003年も引き続き『5%増の3665億円』(同)が見込まれている。背景には、2000年に登場したプレイステーション2(PS2)がようやくゲームソフト市場の拡大に貢献し始めたためだと考えられている。
その流れに乗ったのがコーエーやスクウェア(現スクウェア・エニックス)、ナムコである。コーエーやスクウェアの2003年3月期は過去最高益を記録し、ナムコも前年比増益を確保するなど好調な業績を残した。しかし、このように業績が良いソフトメーカーは数えるほどである。他のソフトメーカーでは家庭用ゲームソフト部門の苦戦が原因で、全体の業績が低迷している所が多い。同部門の営業利益が前年比ほぼ同額となったハドソンは健闘したと言っても良いが、テクモやコナミ、カプコンなどの家庭用ゲームソフト部門は軒並み減益となり、セガ並びにアトラスに至っては赤字に転落している。
家庭用ゲームソフト市場全体は改善傾向にある一方で、多くのソフトメーカーの部門業績は悪化している。この事態を何とか打開すべく、各社とも動き出している。現在、収益向上のために組織改革を積極的に進めているソフトメーカーのひとつがカプコンである。カプコンの組織改革の方向性は「営業部門の権限強化」である。『開発部門に権限が集中していたゲームソフトづくりの体制を改め、五月から販売・営業部門と共同で収益責任を負う合議制に切り替えた』(注2)。カプコンは営業部門を強化することで開発効率の向上を図る目算なのだ。
しかし、それとは逆の方法をとったのが、赤字転落組のセガである。同社はカプコンとは異なり、開発に権限を集中させることで収益改善を図ろうとしている。開発部門のトップである小口氏に、新社長という地位と大きな権限を与え、さらには社長直轄の開発本部が『そこで何を作り、どう売るかを決める』(注3)というセガの改革を、一言で言えば「開発への権限集中」であると表現できるだろう。
カプコンとセガは、ゲームソフト部門の収益改善を図る上で組織改革の必要性に迫られたが、両社が選択した道は正反対になってしまっている。目指すべきものは同じであったはずなのに、どうしてこのような差が生じてしまったのだろうか。
今回は、なぜ両社が異なった選択をしてしまったのかを、考えてみることにしたい。
注1…2003年6月5日 日経流通新聞MJ
注2…2003年5月30日 日経産業新聞
注3…2003年5月23日 日経産業新聞
参考…「各社平成15年3月期決算短信」(つづく)
(ライター:菅井) |
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