「PSP登場 ~PSPがもたらすもの~」Part4 |
「PSPの影響」
PSPの発売により、携帯ゲーム市場へ食指を伸ばすSCE。PSPを一気に普及させるために、PS2と同様にハード自身に魅力を持たせる戦略を執ると考えられる。そして、その戦略はPS2を成功に導いたように、おそらくSCEの思惑通りになるだろう。だが、それがそのまま“ゲーム機”としての成功を意味するわけではない。いつの時点で“ゲームもできる新しいウォークマン”が“色々な機能も付属している携帯ゲーム機”に変わるのかが、予測できないからだ。
多くのソフトメーカーは、市場環境の不透明さにより開発効率を重視する方針になりつつある。そんな中で、全く新しいハードであるPSPにどれほど力を入れるのか、疑問が残る。ソフトメーカーがPSP専用ソフトの開発に本気になるには、PSP市場の潜在的な大きさと成長性に気が付くか、もしくは
彼らの業績がかなり改善する必要があるだろう。そうなれば、PSPもゲーム機として本格的に稼働していくものと思われる。
SCEの戦略通りにPSPがGBAの独占状態を破ることができれば、SCEの業績は中期的に向上する。しかし、短期的にはPSP発売はSCEに悪影響を与える可能性が高い。
ハードメーカーがゲームビジネスで収益を得ようとする場合、ハードの販売だけで利益を確保するのは、まず無理に近い。むしろ、赤字となることが多い。事実、PS2を販売した当初のSCEの業績は大きく下降した。新しいハードを立ち上げる際はどうしても業績の悪化を招いてしまう。それはPSPも同じであろう。PSPだけが例外だとは、とても思えない。PSPはかなりの高機能を持つゲーム機になるのだから、製造コストはPS2と同様に高いものと予想できる。ならば、PSPを発売するSCEの2004年度の業績は、ほぼ間違いなく前期より悪化する。
PSPは普及期にSCEの業績の足を引っ張る。では、PSPの発売による業績の悪化は何を意味するのだろう。それはPSPによってPS3の発売時期が左右されてしまうことだ。ゲーム機のサイクルは5年周期であると言われている。その考えを当てはめれば、2000年にPS2が出ているためPS3は2005年、もしくは2006年に登場するのではないかと思われていた。だが、PSPの導入期にPS3を並行して発売すれば、SCEの業績はより一層悪化する。ソニーグループの稼ぎ頭となったSCEが大幅減益、もしくは赤字転落ということになれば、同グループの収益力は大きく落ち込む。ソニーグループとしてはそのような事態はなるべく避けて、PS3を発売するのはPSPが軌道に乗った後にしたい、と考えてもおかしくはない。
そうであれば、PS2にハードディスクレコーダーなどの機能を付加した「PSX」を年内に発売する理由も見えてくる。つまり、PS2をさらに高機能化することでなるべく寿命を持たせたいのだ。
PSPは大きな利益をSCEにもたらす可能性もあるが、重荷になることもありうる。PSP発売はSCEの賭けなのかもしれない。
(おわり)
(ライター:菅井) |
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