「GCのこれから ~任天堂の試練~」Part4 |
「課題」
稼働率の良いGCはPS2よりも効率的に利益を確保できる。絶対数が少ないからといって、稼働率が高いGCの戦略が失敗したわけではないのだ。しかし、GCはこのままで良いとは言えない。規模の面ではPS2に大敗、ライバル視していなかったXboxとあまり変わらない程度の普及台数なのだ。GCに与えられた課題とは、DVD再生機能などのゲーム以外の付加価値をつけることではない。普及台数の増加なのだ。もし、絶対数でPS2と勝負できる程度の台数を確保できれば、“ゲームしかできない”GCだけに高稼働率の恩恵を十二分に得ることができる。
普及台数増加の必要性は任天堂も感じているようだ。同社は早ければ今年にも、GCを中国で販売する計画だと発表している。普及数の拡大がGC成功への条件であるため、未開拓の地域への進出はもちろん、既存地域での拡販は必要である。ただ、それが必ず成功するという保証はない。もちろん無理に拡販を狙って大失敗することもあり得る。将来、飛躍する可能性を秘めながらも、大きなリスクを抱えているのがGCの現状である。
では、任天堂はこのGCを今後どうするべきなのだろう。評価すべき点は稼働率がよい所であり、改善すべき点は普及台数が少ないことである。これらを併せて考えると、任天堂のソフト重視の戦略は失敗ではないことが証明されたと言える。少なくとも効率よくソフトが売れている以上『制度疲労を起こしたビジネスモデルの立て直し』(注8)に迫られているとは思えない。任天堂の犯したミスは、2002年度にGCがあまりにも急激に普及すると予測してしまったことに集約される。数字を見れば、GCは2001年度の380万台から2002年度は560万台へと、前年度比約47%増の売れ行きを示している。確かに三倍に伸びると予測した数字と比較すれば、47%増は物足りない数字であり、伸び悩みと映るかもしれない。だが、伸び率で言えばPS2に勝っている数字なのである。
2002年度のPS2の出荷台数は約2252万台であり、前年度の約1800万台と比べると25%増の伸びを示しているが、GCには伸び率の点で負けているのだ。PS2を超える伸び率であれば、GCが計画通りに伸びていなくてもそれほど悲観するものではない。ましてや撤退を勧告するべき数字でもない。ならば、任天堂はGCの未来に賭けても良いのではないだろうか。
しかし、現状のままではGCは苦しい。GCに今求められているのは、割高感の払拭だ。任天堂は昨年末のクリスマス商戦に『かつてないソフトラインアップ』(同)で臨んだが、期待したほどハードが伸びなかった。稼働率は良いのであるから、ソフトが悪いとは単純には言えない。では、この現象はなぜ起きたのか。岩田社長は『任天堂として初めて不況の影響を受けた』(注9)ためだとしている。つまりソフトの質やハードの性能に問題があるわけではなく、不況のためにGCが割高であると思われてしまったことが主たる原因だと考えているようなのだ。では今、任天堂がしなければならないことは割高感の払拭であろう。割高感を解消することが、GCを軌道に乗せるための前提条件である。価格競争を好まない任天堂の“英断”に期待したい。
注8…2003年4月8日 日経産業新聞
注9…2002年12月17日 日経産業新聞(おわり)
(ライター:菅井) |
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