「GCのこれから ~任天堂の試練~」Part3 |
「戦略の成否」
現在、どのハードよりも圧倒的に有利な立場にあるPS2。だが、ハードの稼働率はGCより劣っている。絶対的に優位にあるはずのPS2の稼働率が低い理由は何なのか。理由のひとつとしては『ゲームをしない人向けにゲーム機を売る』(注6)戦略があったためだと思われる。
PS2の優位はDVD再生機能などのゲーム以外の付加価値があったためだという。『ゲームで遊ぶことだけが目的ではない消費者は、DVD再生機能を持つPS2など“つぶしがきくゲーム機”に流れがち』(注7)。一方でGCが劣勢である原因は、こうした付加価値がないためだと捉えられている。『人が昔ほどゲームにエネルギーを割かないのに、ゲームしかできないゲームキューブは不利』(同)、『(単なるゲーム機である)キューブを売る理屈付けが難しい』(同
カッコ内筆者)。
しかし、ゲームビジネスにおける利益の源泉はソフトにあるはずである。一見すると「ゲームをしない人向けにゲーム機を売る」戦略をとったSCEは、PS2の急激な普及によって成功したように見えるが、効率面ではGCに負ける結果となっている。もちろん、その戦略がPS2を急激に普及させた一因になったことは事実であろう。だが、ゲームビジネスを手掛けている以上、ハードが何千万台売れようが、それに伴ってソフトが売れなければまったく意味がない。ハードで利益を確保するのは難しいからこそ、ゲームソフトを買ってもらえなければ、SCEの利益にならないのだ。SCEの狙いはゲームをしない人にもゲーム機を買わせて、彼らを新しいゲームユーザーとして取り込むことだろうが、PS2が目の前にあったとして、そこからゲームソフトに興味を持ち、ソフトを買う人間がどれほどいるのだろうか。その証拠に、PS2の稼働率は“ゲームしかできないGC”に負けている。ならば彼らにPS2を売る意味はあるのだろうか。
一方、ハードにゲーム以外の価値を持たせることに何の意味がないと考えた任天堂の戦略の結果が、稼働率の高さとして現れている。普及台数も、参入しているゲームメーカーも、供給するタイトル数も、PS2はGCに勝っているのに、稼働率では負けてしまっているのだ。ここから言えることは、もしGCが将来値下げなどの理由で普及に弾みがつけば、その稼働率の高さを武器にGCがPS2を脅かす存在になるということだ。現時点における普及台数の対比だけで単純にPS2圧勝・GC敗退と決めつけることはできない。
注6…2003年4月8日 日経産業新聞
注7…2002年12月17日 日経産業新聞(つづく)
(ライター:菅井) |
|
|