「GCのこれから ~任天堂の試練~」Part2 |
「販売本数」
ゲーム機を販売している企業にとって、ゲームソフトの売上こそが収益源である。ハードをいくら販売したとしても、それに伴ってゲームソフトが売れなければ、収益には結びつかない。ハードだけで利益を確保してきた企業は存在しないといっても言い過ぎではない。ゲームビジネスで成功するためにはソフトをより多く販売しなければならないのだ。
GCが失敗したと評価される理由のひとつとして、ハードの販売が振るわなかったことが挙げられる。理由はハードの普及が十分でなければ、ソフトが売れないからである。確かにGCのソフト販売本数は計画を達成できなかった。計画に比べて約1000万本も少なかったのは事実である。しかし、GCのソフト出荷本数は計画比約20%減の4450万本に止まっている。当初の計画の半分にも到達しなかったハードの不振と比べると、その減少率はそれほどひどくはない。ハードの普及が計画値を大幅に下回ったのであれば、ソフトもそれに呼応して同様の傾向を示してもおかしくはないが、GCの場合はそうはならなかった。
GCの販売台数は2001年度に380万台、2002年度ではおよそ560万台である。これらを合計すると、GCの累計普及台数は940万台だと予想できる。2002年度に、GC専用ソフトは合計4450万本を販売しているから、GC一台につき、約4.7本のソフトが売れている計算になる。
一方、勝者と呼ばれているPS2はどうだろう。ソニーの決算発表を見てみると、2002年度のソフト販売本数は18990万であると分かる。2001年度のソフト販売本数は12180万本であるから、約56%増で推移している。
同様にハードの普及台数は、2002年度までのPS2の生産台数は2252万台であり、2001年度の1807万台より約24%増で出荷されている。それ以前には1000万台強が出荷されていたのだから、PS2の累計出荷台数は合計すると「約5100万台」程度となる。5000万台を超える普及台数と2億本に迫る勢いのソフトの販売本数。これらの数字からPS2の好調さが伝わるが、GCと同じように一台当たりのソフト販売本数を計算するとPS2の場合、約3.72本でしかないのだ。これはGCの4.7本を大きく下回る。
一台当たりの販売本数を見れば、GCはPS2に負けていない。これをハードの稼働率と規定すると、絶対数で見れば普及台数やソフトの販売本数で敗者であるはずのGCが優位に立っている。こうした事実を考慮すれば、GCは失敗している、だから縮小もしくは撤退も考えなければならないとは一概に言えないだろう。売れていないと思われているのは、任天堂が自らに課したハードルが高すぎたためであるし、累計普及台数5000万台を誇るPS2と単純比較されてしまうためである。
失敗したのは、実は任天堂の計画でしかないのだ。GCは『キューブは今年(2002年)が収穫期』(注5)との考えが早計だっただけなのだ。GC自体の稼働率はPS2と遜色がないほど好調なのだから。
注5…前出
参考文献…「ソニー平成14年度半期報告書」「ソニー平成14年度報告書」「ソニーグループ2001年度中間報告書・2001年度報告書・2002年度中間報告書」「ソニー
プレスリリース」(つづく)
(ライター:菅井) |
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