「GCのこれから ~任天堂の試練~」Part1 |
「不振」
何もないところから、巨大なゲーム市場を作り上げた任天堂。90年代の不況の中でも、日本を代表する巨大企業を凌ぐほどの高収益を上げ続けてきたその任天堂が、いま苦況に立たされている。原因は、満を持して発売した家庭用ゲーム機「ゲームキューブ」(GC)の不振だ。SCEのプレイステーション(PS)シリーズ優勢の現状をGCで挽回しようとした同社の試みは、青写真通りにはなっていない。
昨年、任天堂は『キューブは今年(2002年)が収穫期』(注1)であるとの見方を示し、GCの販売台数を大きく増やす計画を立てた。2001年度の380万台から、2002年度はその約三倍強の1200万台を販売すると目論んだが、結果は見事に外れてしまった。実際の販売台数はその半分以下である560万台しか売ることができなかったのだ。ハードが売れなければ、当然の事ながらゲームソフトの販売本数も減る。GC用のゲームソフトは計画比マイナス1000万本の約4450万本の販売に止まり、任天堂の収益を圧迫した。任天堂の最終利益は、GCの販売不振や為替の影響もあり、前期比約40%も減少した。
そんな中、ゲームボーイアドバンス(GBA)は好調に推移している。すでに累計3300万台が売れ、携帯ゲーム市場ではほぼ独占体制を築いている。バンダイがこれまで力を入れてきた携帯ゲーム機「ワンダースワン」の新型機開発を中止し、事実上撤退を宣言したのは、任天堂の牙城を崩すのは無理と判断したからに他ならない。世界最大手の携帯電話メーカーであるフィンランドのノキアが、ゲーム機能を重視した携帯電話を売り出すと発表した際には、GBAのライバルが登場したと騒がれたが、当のノキアは『競合するのではなく、異なる層を狙う』(注2)と述べており、GBAとの競合は考えていないようだ。それだけGBAが強いということなのだろう。
『ゲームキューブの販売不振が今期以降の業績に影響する懸念がある。好調なゲームボーイに力を入れ、キューブ事業を縮小するなどの対応が必要』(注3)。ゲームキューブが全体の足を引っ張っているのだから、これを縮小し、GBAに特化すべきとの声は多い。もしくは、ゲームキューブが販売不振なのであるから、自然と任天堂は携帯ゲーム事業に集中せざるをえないだろう、との予想もある。
では、任天堂はゲームキューブ事業を一体どうするべきなのだろう。潔く負けを認め、ゲームキューブからの撤退、もしくは大胆な縮小路線を選択するのがよいのであろうか。それとも、周りの評価など気にせずに、あくまでゲームキューブの拡販に努めるべきなのだろうか。現在のゲーム市場は『ハードの売り上げは落ち着き、ソフトが売れるようになる“回収期”に入った』(注4)と言われている。もし、そうであるならば任天堂に残されたゲームキューブ拡販の機会はかなり少ないと言えよう。任天堂は世に送り出して間もないゲームキューブを、再評価しなくてはならない時期にきているのだ。今回は、GCのこれからを考えてみることにしたい。
注1…2003年4月8日 日経産業新聞 カッコ内筆者
注2…2003年3月9日 日経産業新聞
注3…2003年4月8日 日経金融新聞
注4…Mainichi INTERACTIVE ゲームクエスト(つづく)
(ライター:菅井) |
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