「シリーズ化を考える ~続編歓迎論~」Part4 |
「体力の必要性」
リスクを回避するためにシリーズ化を前提にソフトを制作する手法は、一方で充分な体力を必要とする。第一作が赤字であっても続編で利益を確保するためには、ソフトの開発を赤字の間でも継続しなければならない。その間、ソフトメーカーには増え続ける赤字だけが摘み上がっていくのだ。シリーズ化で利益を獲得するには、しばらくは赤字に耐えられる財務力がなくてはならない。
セガが昨年、ゲームソフトの販売不振により2003年3月期の業績予想を下方修正した際、GC向けのスポーツソフトからの撤退を発表した。その理由としては、セガの財務力があまり強くないことが挙げられる。『GCでは、スポーツソフトは、ジャンルとして成立していない』(注11)として今後の開発を中止するとセガの香山氏は語っていたが、これは先行投資負担に耐え切れなかったセガの体力不足が引き金になっている。確かに『GC向けにはアメリカンフットボール、野球、バスケットボールのゲームソフトを製品化しているが、顧客層の違いなどから販売が低迷』(注12)したかもしれないが、GCにスポーツソフト分野が成立していないからこそ、シリーズ化によって今後は他社ソフトと競合することなく利益を獲得できた可能性があるのだ。PS2のスポーツ分野で競合他社との勝負に挑み『完敗した』(注13)はずのセガだが、今は一作ごとに利益を求めなければならない財政事情がある。そのため競合をしなくて済むGC市場ではなく、一度敗北を喫したPS2市場で再度、競合他社と厳しい戦いをしなくてはならないのだ。
失敗を成功に結びつけるためには、続編の制作が求められるが、体力の無いソフトメーカーには辛い戦略でもある。財務基盤が弱く、再建のために利益を生み出す必要があるセガにとっては、GCのスポーツソフト分野からの撤退は仕方の無い選択である。カプコンが『(財務の)安定性が無ければ革新的なソフトも生まれない』(注14)という考えの下、数百億円の資金を保有しているのは、こうした事例があるためだろう。手元に潤沢な資金があるカプコンはGCやXboxへにも有力ソフトを供給してきている。今の所、期待したほどの販売本数は伸びていないようだが、カプコンは近いうちに利益を獲得すべく、次回作を供給するようになるだろう。
シリーズ化によって収益を挙げる手法は、ソフトメーカーの充分な体力を必要とする。これからリスクを上手にかわしつつ、利益を挙げるためには開発力だけではなく、財務力も一段と強化しなければならないのである。企業の成長のためには資金をどうやって調達するのかが、今後さらに重要になってくると言えるだろう。
(注11…「セガ、任天堂GC向けスポーツソフトの開発見直しを検討へ=香山COO」 2002年11月20日 ロイター通信)
(注12…日経産業新聞 2002年11月21日)
(注13…「セガ:業績予想を下方修正、家庭用ゲームソフト不振で 株価急落(5)」 2002年11月7日 ブルームバーグ)
(注14…日経金融新聞 2002年11月29日 カッコ内は筆者)
(おわり)
(ライター:菅井) |
|
|