「シリーズ化を考える ~続編歓迎論~」Part3 |
「ゲーム機戦争の激化」
シリーズ化によってもたらされる効果は、新作を生み出す支えとしてだけに留まらない。結果としてゲーム機間の競争を促すことにもなる。
現在、最も普及しているゲーム機はPS2であり、後発のゲームキューブ(GC)とXboxは大きく遅れをとっている。後発組の二機種向けに販売されているソフトで、今の所大きなヒットを記録しているものは数えるぐらいしかない。ソフトメーカー側にすればGC・Xbox向けのソフトを制作するよりも、最もユーザーが多いPS2向けに販売した方が、もっと多くの成果を得られるだろう。そのため新しいハード向けのソフトの開発を取りやめるソフトメーカーがあっても良いはずである。
だが、実際にはPS2より市場規模が小さいGCやXboxに進出し、ゲームソフトを販売しているソフトメーカーは少なくない。この理由は様々あるだろうが、PS2があまりに多く普及した結果、他社ソフトとの競合がかなり激しくなってしまったことが背景にあるだろう。PS2の市場規模が巨大であるゆえに、PS2向けのゲームソフトがかなり多くなってしまっている。そうなると、他社の販売するソフトとの激しい競合が起き、自社ソフトが思ったよりも売れなくなる可能性が高くなる。それを避けるために、新しいハードへソフトを供給する選択をしたのである。
一方で、市場が狭いゲーム機にソフトを供給するのであるから、より「売れないリスク」が増大する。それはPS2向けにソフトを投入するときよりも、ハイリスクである。しかし、続編の制作を予め予定していれば、競争が少ない代わりにユーザーも少ないハードで、何とかリスクを和らげることができる。ソフトメーカーも、市場規模の小さいハードにソフトを投じるのであるから、一作目からいきなり利益を挙げようとは考えていないだろう。一作目で、ある程度の手応えを掴み、二作目・三作目の開発につなげ、続編で利益を出してシリーズ全体として利益を確保する計算をしているのではないか。だからこそ、あえて市場規模が小さいGC・Xboxに参入できたのだろう。
続編に頼ったソフト開発は、それだけゲーム機同士の競争を促すことにもなる。市場が小さいというハンデを持つGCやXboxにソフトを供給するには、予め「売れないリスク」を覚悟した上で参入しなければならない。そのとき、シリーズ化を始めから計画をするのとしないのではソフトの供給意欲は大きく異なる。一作目は赤字であっても、次回作以降で利益を確保するやり方であれば、いきなり赤字を抱える結果になっても、大きな問題ではない。しかし、一作ごとに収支を判断していれば、赤字になる可能性があるハード向けにわざわざソフトを開発しようと考えるだろうか。たとえ続編の制作が検討されても、前作の販売結果が赤字であればあまり期待できない、と判断してしまうことも充分にありえる。結果として、撤退という選択肢を選ばれてしまうだろう。
新しいハードに参入しているソフトメーカーが、シリーズ全体で利益を取ろうと考えているのであれば、シリーズ化の効果はゲーム機同士の争いを促進させるだろう。続編という緩衝材は、ゲーム機間の競争を促す貴重な役割をも担っている。
(つづく)
(ライター:菅井) |
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