「FF11は失敗か成功か ~再考の必要性~」Part3 |
「評価される理由」
会員数が採算ラインに乗らなくても、FF11を評価する声がある。『オンラインゲームとして見れば一定の評価ができる』(前出)と口にしているのはエンターブレイン浜村社長だ。一体、どのような理由があってFF11を肯定的に見ているのだろうか。
FF11が評価をされている最大の理由は会員数の多さであろう。失敗の原因であると指摘されていたFF11の会員数だが、見方を変えれば評価に値する数字である。採算ラインが約20万人である限り、現状の会員12万人は少ないと言える。だが、絶対数で見れば12万人という数字は非常に評価できる。
まず、オンラインゲーム市場がまだまだ未成熟な日本で12万人もの会員を集められたのはお見事だと言っても良いだろう。世界でも有数のオンラインゲーム開発企業である韓国のNCソフトが開発し、『世界最大のオンラインゲーム』(2002年9月30日
日経産業新聞)と称されている『リネージュ』でさえ、日本での会員数は今年2月からのサービス開始以来、9月時点まで『四万人の有料会員』(同)しか集められていない。一方のFF11の会員数は5月27日の時点で『5万人強』(注2)であると、同日のスクウェア決算説明の際に発表されている。同月16日の発売後、わずか数日間ほどで5万人の会員を獲得したのだ。しかも、FF11をプレイするためにはソフト以外にもハードディスクなども揃えなければならず、ユーザーにとってはとても高いハードルがあったのに「リネージュ」を超える会員数をわずかな期間で確保できたのだ。現在では、さらに多くのユーザーが会員になっている。サービス開始から約半年間での12万人という集客力は、他のオンラインゲームと比較しても決して低いものではない。
さらには、その会員数の増加率にも注目する必要がある。今年5月のサービス開始から数日で5万人強、その5ヵ月後の10月の時点では12万人強にまで増加している。わずか5ヶ月で約2.4倍に急増しているのだ。単純に考えると5万人を集めた5月から毎月、前月比約20%増のペースで会員数が増えている計算になる。この増加率はいつまで続くかわからないが、もしこのペースをあと少し保てるのであれば、採算ラインと言われている20万人を今期中に獲得できるだろう。これまでの増加率を考えれば、黒字化の道のりはそう険しいものではないのだ。
会員数の絶対数と増加率。この二つの要素はFF11を充分評価できる地位に押し上げている。それにも関わらず、FF11が失敗といわれるのはスクウェアの自ら設定したハードルが高すぎただけなのだ。もし、スクウェアがハードルをもっと低い位置に置いていれば、今ごろは成功だと言われているだろう。収益面だけでFF11を判断すると、このゲームの評価すべき点を見逃してしまう恐れがある。FF11は“失敗”ではないのだ。
注2 (「スクウェア:下記純損失は32億円の赤字-今通期は42億円の黒字へ“2”」 ブルームバーグ 2002年5月27日)
(つづく)
(ライター:菅井) |
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