「Xboxの現状 ~普及への長期戦略~」Part4 |
「虎視耽耽」
Xboxが現状、不振に陥っている原因をどこかに求めるとすれば、それはMSの対応の遅さに一因がある。だが、それを肯定的に捉えればMSの戦略が慎重になっているためだと言うことができる。オンラインゲームに力を入れているXboxの高性能さと現状のオンラインゲーム市場の未成熟さが生み出すアンバランスを時間が埋めてくれるまでMSは慎重に事を運ぶと予測できる。なぜなら、ゲーム(オンラインゲーム)以外にXbox普及を後押しする要素は何も無いのだから。
PS2が市場に広く普及した理由のひとつとしてDVD再生機能がついていたことは見逃せない要素だ。ゲームだけではなく、その他の用途にも使えるハードだったからこそ発売当初、対応ソフトがそれほど無くても数百万台単位で売れていったのだ。ゲームがプレイできるという特長以外にも、ハードに魅力があったからこそ普及を大きく促したのである。Xboxも同様にDVD再生機能を付けて発売したが、すでにDVD機能を有したPS2が数百万台単位で普及した後であれば、Xboxのハード自体の魅力は薄れてしまう。そのためDVD再生機能を付けていてもあまり普及の手助けにはならなかったのである。だが、MSが実行している慎重策からはハード普及の原動力をオンラインゲームに求めていると感じ取れる。いわばXboxにとってDVD再生機能はおまけなのだ。
MSの慎重策は一方でとても時間が必要な戦略であるというマイナス面を持っている。そのマイナスは確かに小さくない。しかし、Xboxのターゲットは20代前後、詳しく言えば18~35才までの若年層だ。この層が主要なユーザーになるのであれば、MSの戦略も有効となる。それは購買力が10代のものと比べると高く、それだけゲーム機の乗り換えをし易い立場にあるからだ。逆に低年齢層をターゲットにしていれば、彼らの購買力が相対的に見劣りするために、こういった戦略は機能しない可能性が高い。購買力が低ければ“囲い込む”ことができるが、その反対では囲い込みは難しいのだ。乗り換えコストが他の層より下がっている年齢層を狙ったMSは計算高いと言えるだろう。
そもそも、世界最大のソフトメーカーがあっさりゲーム業界で敗北するわけが無い。全世界での普及台数(390万台)は下方修正した数字とはいえ、それを達成するところまでXboxを普及させているのはMSの底力を見た思いがする。期待していた日本では30万台前後と不振に陥っているが、MSは焦っている様子は無い。むしろ、それを挽回するくらいの長期戦略を練っているのではないかと思えるぐらいだ。MSが仕掛けた長い戦いはまだまだ始まったばかりなのである。
(おわり)
(ライター:菅井) |
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