「流通改革
~自社流通化の副産物~」Part4 |
「分化と純化」
メーカーによるゲームソフトの自社流通化は、ソフトメーカーに変化を促した。すでに、パブリッシャー的機能を帯びていた所もあるが、自社流通化でその機能は一層強まったと言っても良い。程度の差こそあれ、パブリッシャーとしての役割を持っていたソフトメーカーは、自社流通化でその役割を強化せざるを得なくなったのだ。
いち早く自社流通を始めたコナミは、徐々にパブリッシャーとしての役割を強めつつある。開発部門を次々に分離・独立させて数多くの開発子会社を作り、コナミ本体は子会社が開発したソフトの販売活動に注力するようになっている。さらに、独立系のソフト開発会社(ハドソン・元気など)も次々に傘下に収めつつあることからも、パブリッシャー色を濃くしていると言えるだろう。新たにコナミ本体の子会社となった各社もコナミの販売網に期待している。昨年、コナミの傘下入りしたハドソンの工藤社長は『コナミの販売網を活用できれば、ゲームの売り上げ増も期待できるだろう』(2001年7月31日
日経産業新聞)と述べている。
最近、活発になってきている大手による中小ソフトメーカーの囲い込みは、このような背景があるからだとも言えるのかもしれない。おそらく、パブリッシャーとしての立場を徐々に純化させているからではないだろうか。ソフトメーカーが徐々にパブリッシャー化するのは自然の成り行きだと捉える見方もある。『情報ソフトビジネスでは、産業は成熟するにしたがって、パブリッシャーとデベロッパー(ソフトの制作・開発に直接携わる人物、団体)が分化していくことは、一つの経験則だと言えるのでしょう』(P78
「ゲームの大學」 著平林久和・赤尾晃一 メディアファクトリー 1996
カッコ内は筆者)。市場の急成長傾向も一服し、成熟化が叫ばれている中で推進された自社流通化が、ソフトメーカーのパブリッシャー化を一層加速するのは間違い無いだろう。そう考えると、ソフトメーカーからソフトパブリッシャー化し、それを純化させつつあるコナミの例は、ゲーム市場の成熟化を示す格好の指標になっていると言えるのではないか。過大評価かもしれないが、先進的な経営を次々に取りいれ、様々な影響をゲーム業界に与えてきた同社を見れば、この業界が今どのようになっているのかを判断できるのかもしれない。
今後は、ゲーム市場の成熟化が進むにつれ、コナミのようなパブリッシャー機能を大きくさせた“ソフトメーカー”が多数表れていくと思われる。カプコン、アトラスはそれに続いたのだろう。こうした「パブリッシャーとデベロッパーの分化」は成熟度が高まりつつあるゲーム市場で生き残るためのひとつの方法であるのは間違いない。役割分担が進むゲーム業界は、ソフトメーカーの役割を変えながら今後も変わりつづけていくのだろう。
(おわり)
(ライター:菅井) |
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