「流通改革
~自社流通化の副産物~」Part1 |
「変わる流通」
ゲームソフトの流通が変わりつつある。従来、ソフトメーカーが作り上げたゲームソフトは、問屋とも呼ばれる卸業者、もしくはハードメーカー(例えばソニー・コンピュータエンタテインメントなど)等の中間業者へ一旦出荷され、その後彼らを経由して小売店などの店頭に並び、最終的にゲームユーザーへ渡るという経路でソフトが流通していた。その既存の仕組みをソフトメーカーが変えようとしている。
これまで、ソフトメーカーが制作したゲームソフトが辿る流通ルートには、ソフトメーカー自身が関与する余地はあまり無かった。ソフトメーカーは完成したソフトを他に販売してしまったら、それで“おしまい”。ソフトメーカーとユーザーの間を取り次ぐ、「誰か」にソフトを渡した時点でソフトメーカーの仕事は終了していた。そのため、ソフトメーカーは直接、小売業者に販売することは無かったと言っても良いだろう。
だが、そうしたシステムを嫌がるソフトメーカーも出始めてきた。自社の開発したソフトを、独自に構築した流通網を利用して、直接小売店に販売したいと考えるようになってきたのだ。現在では、コナミやカプコン、アトラスなどが自社流通を実施している。ソフトメーカーが自社ソフトを他の業者にまかせるのではなく、自社の流通網でソフトを供給する訳は「利益率の向上」をもたらしてくれるからだ。
これまで通りの流通システムだと、ソフトメーカーと小売店の間にどうしても第三者が介入してしまい、彼らに支払わなければならない経費がかさんでいた。流通業者にしてみれば必須の手数料であるが、ソフトメーカーにとって見れば余計な経費だったのだろう。ここ数年、ゲーム市場は急成長路線から安定成長へと変わり、大きな成長を望むのは難しくなってきている。そのような環境下で、最も手っ取り早く利益を拡大させるためには「売上の増加」よりも「経費の節減」を行う方が効率が良い。
例えばソフト販売で1億円を売り上げ、開発費などで8000万円の経費がかかったとしよう。この場合、利益は2000万円(売上高に対する利益率20%)だが、もし自社流通化によって経費を削減し、利益率を10%向上させたと仮定すれば、ソフトメーカーが手にする利益は3000万円にもなる。逆に流通網を構築せず、供給を第三者にまかせたまま(つまり利益率を20%のまま継続する)3000万円の利益を得ようとすると、売上を50%アップの、1億5千万にしなければならないのだ。
これは極端な例かもしれないが、経費の節減は大きな効果をあげるためのひとつの術なのだ。自社流通導入前にカプコンが試算した効果が『利益率の四、五ポイントの上昇』(2000年
8月8日 日本経済新聞)であり、同様にアトラスは『10%の粗利益の向上』(アトラスプレスリリース
2001年6月18日)であった。売上の急激な伸びが期待できない環境下では、この威力は絶大だ。だからこそ、自社流通に踏み切るソフトメーカーが出てきたのだ。
だが、この自社流通によってソフトメーカーは変わらざるを得なくなってきた。もちろん、望んで変わる場合もあるだろうが、自社流通はソフトメーカーの役割を変えていく促進剤になるのは間違いないのだ。では、自社流通はソフトメーカーの何を変えるのであろうか。
今回は、自社流通がもたらした副産物について考えてみることにしたい。(つづく)
(ライター:菅井) |
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