「ゲーセンの復権 ~ブームの予兆~」Part3
「疑問」

「次のブームがやってくる」という予測がなかなか現実的なものであるという結論を出すための材料は揃っている。しかし、この予測した未来が実際に訪れる保証は無い。ならば、ブームが訪れないとすれば、その場合の根拠はどこにあるのだろうか。

そもそも、AM施設が昨年後半から回復傾向にあるというが、この主たる要因は「VF4」や「鉄拳4」などの人気シリーズがリリースされたからであるし、客単価の高い(1プレイ料金が高い)「プリクラ」が再び人気になったからである。極端な話、それらが主にAM施設の回復傾向に大いに貢献をしただけなのだ。しかし、今年もそれらの人気ゲーム機の続編が続いて出るとは限らない。「VF4」などは、実に数年ぶりの登場なのだ。その新作が今年も続けて出てくるとは思えない。改良版程度は出るだろうが、新作を出すのはかなり難しいだろう。セガはそれを見越して、今期(2003年3月期)のAM施設の収益は昨年より減少すると予測している。

さらに第二次プリクラブームと言われている現在のプリクラブームも、前回のブームと同じく早々にブームが過ぎ去ってしまうことだって十分考えられる。今回のブームは前回ものとは違い、長続きすると見る向きもあるだろうが、“歴史は繰り返す”という言葉もある。今回もブームも急に失速することだってあり得るのだ。そうなると、プリクラを利用していた女性ユーザーなどのゲームセンター離れが起きることも懸念しなければならない。しかも、彼女らを主たる顧客としていたメダルゲームや景品ゲームも、同様に失速することすら考えられる。人気ゲーム機で女性ユーザーや家族連れをゲームセンターに呼び込んだと言えども、完全に定着したわけではない。決して、AM施設の回復傾向は盤石ではないのだ。

つまり、AM施設の昨年の回復はヒット作に恵まれただけの、ただの一過性のものであると判断することもできる。かなり悲観的な見方かもしれないが、そういう可能性は十分にあるのだ。

そう考えると、ブームを予測したメーカー首脳の言葉は、単にAM施設の久しぶりの好調さに期待感を表しただけだった、とも受け取れる。リストラ策が効を奏し収益が顧客層の拡大を伴って順調に回復した結果から、今後のブームの予兆を独自の嗅覚で嗅ぎとっただけかもしれない。リストラや人気ゲーム機の登場、新しい顧客層の獲得などの要因によってAM施設が回復したからと言えども、必ずしも次のブームが来るとは言えないのだ。

(つづく)

(ライター:菅井)

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