「ゲーセンの復権 ~ブームの予兆~」Part2 |
「ブームの根拠」
「次のブームが来る」と言うメーカー首脳の予測は果たして現実的なものなのか。それとも楽観的な希望が先走っただけの話なのだろうか。確かに、メーカーの首脳の発言であるからそれなりの根拠に基づいた主張であると思われる。では、その予測に説得力を持たせている事実は、一体どこにあるのだろうか。
メーカー首脳による予測を単なる夢物語にしていない事実は複数ある。まず、前にも述べた通りAM施設の売上が回復しつつあることが挙げられるだろう。現在でも回復傾向が続いていることから、ユーザーがAM施設に戻ってきていると言える。ユーザーが増加すれば、それだけブームが起きやすい素地ができるのだから、次なるブームの予測はまったくの空想ではないだろう。
しかも、最近のAM施設では、プリクラや対戦型格闘ゲーム以外にも、景品ゲームやメダルゲームなどといったこれまで定番だったゲーム機とは違う、新しいコンセプトのもとで開発された業務用ゲーム機が人気を集めている。例えば景品ゲームだと、よく当たるように成功率を高めたゲーム機などは高い人気だ。この種のゲーム機は従来のユーザー層とは異なる家族連れや女性ユーザーに人気があり、新しい顧客層の獲得に繋がっている。新しいユーザーの増加はAM施設の回復基調をより一層、確実にするはずだ。
客層の拡大やAM施設が回復している事実は、ここ数年メーカーを慎重にさせてきたAM事業への再投資を積極的にさせる原動力にもなっている。ナムコの高木新社長ははっきりと『守りの一年は終わり。今度は攻めだ』(2002年6月1日
日本経済新聞)と述べている。
投資金額が大きい反面、利益率が低いという構造的な問題を抱え、しかも市場全体が縮小傾向を示しているAM事業からの撤退や縮小を実行しているメーカーがあるなかで、同事業にそれなりの資金を投資することはあまり歓迎されるものではない。だが、AM施設が好調を取り戻しつつあるのなら、再投資を行う名目ができる。
AM事業への投資は、次のブームを作る上でも非常に大事である。なぜなら、AM事業に新規に資金を投じるということはゲームセンターなどのAM施設を出店するだけではなく、業務用ゲーム機の開発にも力をいれることでもあるからだ。ブームを作るためには、ユーザーが熱中するような楽しいゲーム機が無くては始まらない。そのためには開発力の充実は必要不可欠なのだ。前記したナムコは今後の業務用ゲーム機開発の重点を景品ゲームやメダルゲームに置くと表明している。現在、ゲームセンターに新しい景品ゲーム・メダルゲームなどが登場しているのは再投資の結果であろう。
AM施設の回復傾向が、メーカーによる再投資を後押しし、ゲームセンターの純増とゲーム開発力の強化をもたらす。その結果、AM施設の業績の改善にさらに貢献をする。メーカー首脳はこの好循環をすでに読んでいたからこそ、ブームがやって来ると予測したのではないだろうか。こうしてみると、なるほど「次なるブーム」はまったくの希望や願望ではなさそうだ。
(つづく)
(ライター:菅井) |
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