「PS2、勝利宣言 ~ソニーの事情~」Part1 |
「勝利宣言」
『ゲーム機戦争は終わった。…リーダーになれなかった企業に次のチャンスはない』(2002年 5月27日
日本経済新聞)。2002年2月にマイクロソフト社の「Xbox」が発売され、ようやく「プレイステーション2(PS2)」「ゲームキューブ(GC)」「Xbox」の三台の主要なゲーム機が出揃い、これから本格的な“ゲーム機戦争”が始まるという所で、ソニー・コンピュータエンタテインメント・アメリカの平井社長はSCEの勝利を高らかに宣言をした。まともに考えれば、当事者が戦いの最中に言うべき言葉ではない。だが、他のゲーム機の数倍の普及台数を持ち、独走態勢に入ろうとしているPS2を抱えるSCEならば許される言葉でもある。
そもそも、ゲーム業界に籍を置く人間、特にハードメーカーの人間の物言いははっきりとしており、多少過激な発言をすることもある。最も歯切れの良い人物は、数々の言動でゲーム業界に波紋を投げつづけた任天堂前社長の山内氏であるが、SCEの人間もそれに負けてはいないようだ。
SCEの勝利宣言に、任天堂の社長に新しく就任した岩田社長は『ゲーム機は冷蔵庫のように壊れなければ2台目を買わないというものではない』(2002年5月31日
毎日新聞)と“大人しめ”の反論したが、GCが四百万台程度の普及台数ではその反論も力強さに欠ける。しかし、SCE自身が勝利宣言をしなくとも、圧倒なリードを保っているPS2がゲーム機戦争の勝利者に最も近い場所にいるのは、周知の事実である。それなのに、なぜSCEはあえて勝利宣言をしなければならなかったのか。考えようによっては、ただ単に平井氏がPS2の好調さのあまり口を滑らせたと考えることもできる。あるいは、彼の一言でゲーム業界では良く聞く“舌戦”が仕掛けられたのだとも想像できる。
確かにそういった面があるのも否定できない。だか、この発言に隠された真意は「舌戦」だけではないだろう。もしかすると、あの勝利宣言はSCEがゲーム機戦争を早期に決着させたがっているが故に出てきた発言なのかもしれない。
SCEが勝利宣言を出せば、業界関係者だけではなく、一般ユーザーにもその内容が耳に入る。そうなると、新たにハードを購入しようと検討しているユーザーはPS2以外のゲーム機購入をためらうだろう。PS2との間に圧倒的な差があれば、ソフトの量はPS2より少なくなるからだ。ソフトを遊ぶためにゲーム機があるのだから、ユーザーはそうしたハードの購入を控えるようになる。平井氏の発言はそうした流れを作り、PS2の勝利を早めに確定させたい気があったのではないか。
では、SCEが早期にゲーム機戦争を決着させたいと考えているとすれば、その理由は何なのか。次回からは勝利宣言に隠された“ソニーのあせり”に迫ってみたい。
(つづく)
(ライター:菅井) |
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