【コラム】「企業再生 ~黒字転換の意味とは~」part4
「進歩の足跡」

長年、赤字に喘いでいた数社のゲーム会社が2001年中間期で黒字転換を果たし、通期でも黒字を達成する見込みであるという。赤字を克服した企業は、それぞれの手法で数期ぶりの利益を手にいれたが、その過程は特筆すべきものがある。

殊に、アトラスとセガは自社に染みついた赤字因子との格闘においてさまざまな教訓を残した。アトラスはゲーム業界の一発屋体質からの決別を図ることで黒字に浮上し、セガは失敗から次なる成功を生み出したおかげで、生きかえることができた。彼らが残したものは、今後のゲーム業界において、おそらく活かされる。どん底から立ち直った両企業の貴重な教訓を、活かさない手は無いからだ。そして、この両者がもたらしたものは、ゲーム業界全体の進歩を生み出していくだろう。

もし、彼らの経験を活用する術が上手く広がったのなら、ゲーム業界の体質はより強化される。業績の変動率が高く、“水物”とも揶揄され続けてきた、そんな立場から一歩進むことができる。確かに、短期的には、業績が激しく上下する場合もあるだろう。ゲームをビジネスにする限り、短期のそれを解消するのは無理かもしれない。近視眼的な観点から衰退論者に、何も変わっていない、と非難されることもあるだろう。だが、長い目で考えれば、変動幅は少なくなる。活かす努力をしていけば、“水物”と呼ばれるほどの予想のつかない動きはしなくなるはずだ。それは、ゲーム業界が進歩した証とは言えないだろうか。しかも、進歩をもたらしたのは、赤字から苦難の末に黒字に転換した企業のおかげだと言えないだろうか。

長期にわたって不振を極めていたゲーム会社から、ゲーム業界の進歩の胎動を感じられたのは、この業界がまだまだ発展する可能性を秘めているからだ。しばらく勢いの感じられなかった企業が、再び勢力を盛り返し、活躍をする。衰退論者が言うように、業界自体が衰退していくのであれば、そうした企業は二度と浮上することなく、最初に姿を消すだろう。しかし、経営不安説が流れても、彼らは業界から退場せずに、もう一度復活してきたのだ。これこそ、業界の発展途上を裏付けるものではないか。進歩の足跡が続く限り、ゲーム業界のダイナミズムはまだまだ失われない。

(おわり)

(ライター:菅井)

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