【コラム】「巨星落つ ~遅れた葬礼~」part3
「喪主は誰か」

偉大な先人を葬り去るための葬式をとり行なうためには、喪主が必要だ。喪主とは葬式を行なう際の代表者のことである。では、誰が先人達を葬る代表者、喪主を務めるのか。周囲の状況からは、あるグループに期待が寄せられていると判断できる。そのグループとは、ベンチャーを含む中小ソフトメーカーだ。

大手ソフトメーカーは、中小のソフトメーカーに喪主としての役割を果たして欲しいと思っている。本当にそう考えているのか、それとも特に意識せずに行動しているのかは分からないが、中小にゲームソフトの開発をほぼ丸投げしている現状は、中小に喪主役を期待している証拠だと受け取れる。

大手が中小に期待する理由はひとつ。彼らが、偉大なる先人達の業績を霞ませるような素晴らしいゲームソフトを生み出す可能性を持っているからだ。先人達を葬り去るためには、先人達が作り上げてきたゲームを超える斬新なアイディアを持ったゲームソフトを開発しなければならない。もし、そのようなソフトを世に送り出したのなら、その者は喪主を立派に務め上げたことになる。だが、大手からそうした喪主が現れる可能性は低い。それは、大手にはいまだ偉大なる先人達が居座っていることに原因がある。彼らは大抵の場合、ソフト開発の責任者として、開発部門に鎮座している。その先人達の影響を受けないソフトなどあるのだろうか。間接的にであっても、何らかの影響があると見るのが普通だろう。彼らは何と言っても、開発部門の責任者なのだから。

このような環境下で、大手から画期的なソフトが生まれるのを期待するのは難しい。どんなに画期的なゲームソフトを生み出したとしても、どこかに彼らの“色”が出る。それでは、本当の意味での画期的なソフトだとは言えない。だからこそ、大手は先人達とのしがらみの無い中小に“希望を込めて”丸投げをするのである。

斬新なアイディアを求めて、中小に期待をかける大手の動きは、ゲーム開発支援制度を創設するまでに及んでいる。任天堂の「ファンドキュー」は、その代表だが、他にもマイクロソフトなどが開発支援プログラムをスタートさせている。これも、大手がどこかの中小に喪主役を求めている一つの結果だと言えるだろう。ベンチャーを含む中小ソフトメーカーに資金を供給して、ゲームの開発支援を行なう背景には、自社から喪主役を生み出せない苦悩と、マンネリ感打破のために葬式を渇望する大手の姿が見え隠れする。業界の未来は、中小に託されたのである。

(つづく)

(ライター:菅井)

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