【コラム】「ゲーム業界の構造改革 ~悪癖と宿命との決別~」part4 |
「経営陣の手腕」
ゲーム業界の悪癖と宿命をテクモとコナミはそれぞれ独自の方法で克服せんと努力をしている。どこのソフトメーカーも同種の問題を抱えているだけに、両社の挑戦は業界の体質を一変させる可能性を持っている。ただ、コナミの手法を用いることができるメーカーはほぼ無いだろう。ゲーム事業以外の事業を以ってゲーム事業の宿命に対抗しようとする試みはユニークであるが、他のメーカーにとって企業規模が大きくなければ誰にも真似できないコナミ方式を参考にするのは難しい。
反対にテクモの解決策はどのメーカーにもできる。開発者に発想の転換を求め、責任を負わせる方法に特別な資金は要らない。企業規模の大小を問わないテクモ方式が、その他のソフトメーカーにも伝播すれば、長年に渡って忌み嫌われてきた延期癖という悪癖を無くすことができるかもしれないのだ。テクモ方法は業界の悪癖を取り払う大いなる可能性を秘めている。
しかし、テクモ方式も万全ではない。不安点は当然ある。それは、全ての開発者がテクモ方式を受け入れるのか、ということだ。今まで開発者は時間や資金のことはあまり考えず、自由にソフトを制作してきた。『売上云々もまったく気にしなかったし、イイ物を作るために時間をかけることが美しいと思っていました』(P32
週刊宝島 2001 3.14 NO.496
宝島社)と語るのは「メタルギア」シリーズを手掛けているコナミJPNの小島秀夫氏である。この言葉は「メタルギア」シリーズが初めて世に出た1980年代を述懐したものであるが、開発者の中には現在でも小島氏がかつて持っていた考え方に同調する人間は少なくないはずだ。そのような考えを持つ彼らにいきなり発想の転換を求め、代わりに制約に等しい責任を与えたらどうなるか。おそらく反発を招くだけだろう。もし、開発者達を説き伏せることができなければ、延期癖は直らない。彼らを納得させられるかどうかが、大きな分かれ道なのだ。つまり、開発者達を説得する側である経営陣に全てがかかっているといっても過言ではないのである。
ソフトメーカーの経営陣にかかる責任は重くなる一方だ。ゲーム市場の冷え込みからくる経営悪化が多くのソフトメーカーで起きるようになり、その責任をとる形での経営陣の交代が一斉に起きている。セガ・スクウェア・アトラスなどが主な例だ。旧経営陣が対応できない難問が山積しているからこその交代劇なのであるから、それだけに新経営陣に課せられた責任は重い。当然のことながら山積している問題の一つに、開発費の抑制がある。それを達成するためには、悪癖の解消は不可欠だろう。
ゲーム業界の構造改革には“裏技”は存在しない。改革の成否はすべて経営陣の手腕に委ねられているのである。
(おわり)
(ライター:菅井) |
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