【コラム】「ゲーム業界の構造改革 ~悪癖と宿命との決別~」part3
「コナミの試み」

ゲーム業界の悪癖が延期癖ならば、宿命とも言えるのが「不安定さ」であろう。ゲームソフトは世に出してみなければ、売れるかどうか分からない。ゲームソフトは生活必需品ではなく、娯楽品なのだから当然だろう。その娯楽のためだけに存在しているゲームソフトが面白くなければ、ソフトの存在価値は無いに等しい。もし、ゲームユーザーに面白くないと判断されてしまえば、そのゲームソフトは売れない。売れないどころか彼らはそのソフトに最もふさわしく、長年彼らの間で親しまれてきた“蔑称”を授け、商品寿命に止めを刺す。

ならば、ユーザーに面白いと思ってもらえるようなソフトを作れば良いのだか、彼らの価値判断基準は実に曖昧だ。明確なもの、不変なものを探り出すのは至難の技と言って良い。そのため、ゲームソフトの売り上げをあらかじめ予測することはかなり難しい。例外として、販売本数を事前に予測できるソフトがあるが、それは一握りの人気シリーズ続編に限られる。つまり、ゲームソフトをビジネスにすれば、この不安定さが良くも悪くもメーカーの業績を大きく変えてしまう可能性を常に孕んでいるのだ。

ソフトメーカーは、これまで業績を安定化させるべくその宿命を何とか解消しようと努力してきた。最も有効とされる策の一つが発売タイトルを増やすことだ。発売されるゲームソフトが増えれば、それだけ売り上げ本数が伸びる。予測が外れ、思わぬ不振に陥るソフトがあっても発売タイトルが多ければ、それを補える。仮に、発売タイトルが少ない無い場合『供給するタイトル数を増やし、リスクを分散すべきだ』(2001年3月2日 日経金融新聞)と証券アナリストから指摘されることもあるほどだ。それだけ、このリスク回避策は一般的なのだ。だが、コナミは発売タイトル数を増やす方法以外にも、別なやり方を以って業績の安定化を試みた。

コナミの解決策はゲーム業界の宿命とも言える不安定さを仕方の無いものだとあきらめ、ゲームとはさほど縁が無い、毛色の違う事業を保有することで企業全体に与える悪影響を最小限に食い止めようとしたのだ。フィットネスクラブ運営企業「ピープル」(現コナミスポーツ)、玩具メーカー大手のタカラなどの企業をコナミの傘下に入れたのは、コナミの業績を安定化させるための重石の役割を期待したからなのだ。

ゲーム業界が抱える問題点を言わば「棚上げ」することで、宿命の悪影響を解決しようと試みているコナミのやり方は“力業”ではある。はっきり言えば、大企業でなければできない解決策であろう。ただ、これも一つの解決策であるのは間違い無い。

自社の企業規模を多いに利用し、ひとりゲーム業界の宿命との決別を宣言したコナミ。その選択肢が正しかったのかどうか、真価が問われるのはコナミがゲームソフト事業で苦境に陥ったときだ。結論は、まだ出ていない。

(つづく)

(ライター:菅井)

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