【コラム】「GCの不戦主義 ~任天堂の非競合戦略~」part3 |
「差別化の徹底」
GCがゲーム市場で今後、元気に活躍できると予想した背景には、顧客の年齢層に違いがあるから、と前回に述べた。だが、GCの差別化策はそれだけには留まらない。GCは様々な面でPS2・Xboxとの“勝負を避けた”のだ。もちろん、“勝負を避けた”とは差別化のことを指す。
PS2やXboxの特徴は、数多くあるが代表的なものにオンライン対応機能があるだろう。オンライン対応機能は両ゲーム機の最も強調すべきセールスポイントのひとつでもある。今後、数年の間にオンラインゲーム市場が急成長する、との予測が大勢を占める中、PS2とXboxはオンラインゲーム市場をはっきり見据え、準備に余念がない。PS2の場合、ネット接続をするためには必要な周辺機器を購入しなければならないが、その代わり、早ければ今年の4、5月にもインターネット接続やゲームのコンテンツ配信サービスを始めるという。XboxはPS2と違いネット接続に必要な機能はあらかじめ搭載されており、その点ではPS2より上だ。Xbox総責任者のバック氏もそこを強調する。『…ブロードバンドでのオンラインプラットホームとして、ハードディスクやイーサネットを搭載しており、その面でPS2に勝る』(Mainichi
INTERACTIVE ゲームクエスト 「日本上陸間近、Xboxチーフオフィサーが戦略を語る」
2002年2月6日)。さらには『…Xboxがブロードバンド化を進める原動力となることに期待して欲しい』(同)とも言っている。PS2・Xboxともにオンライン対応機能には大きな期待をかけ、具体的に動いているのである。
しかし、GCにはオンライン対応機能は無い。任天堂の首脳達もオンラインゲームには消極的だ。『ネットゲームの事業性は未知数』(日本経済新聞2001年8月14日)と語る山内社長の言葉が任天堂のオンラインゲームに対する姿勢を表している。ここでGCとPS2・Xboxとの違いがはっきりと見て取れる。任天堂はオンラインという武器をGCに持ちこまない事で、彼らと同じ土俵での争いを避けたのだ。もちろん、将来的にはGCもオンライン対応機能を身に付けるようになるだろう。だが、それは将来の話だ。任天堂の今西紘史氏は『ネットゲームの収益性が確認でき次第、対応する自社ソフトを販売したい』(同)と述べているが、その時期がいつになるのかはわからない。Xbox事業部長の大浦博久氏でさえ『ブロードバンドを生かしたゲームが主流になるのは来年以降になる』(日経産業新聞
2002年1月29日)と見ているのだ。任天堂としては、そんな先の不確定要素の強い分野で今、PS2やXboxと争うよりも、オンライン対応機能をあえて盛り込まないことで、最も大事な出足の時期に差別化を図ったのだ。そうすることで、非競合状態にGCを置き、生き残りを確かなものにしたのだ。GCとしては自分自身が生き残る足場さえ早期に確保してしまえば、その後でオンラインの面でPS2やXboxといくら競合しようとも、問題は無いのだ。
任天堂は、差別化をオンライン対応機能の面だけには留めなかった。PS2・Xboxに装備されている「DVD再生機能」もGCから外したのだ。これは、DVD再生機能を付ければゲーム機本体の価格が上昇することを嫌気したためであろう。価格を抑えることによって、価格の面からも差別化を図ろうとしたのである。結果として、GCの価格帯とPS2・Xboxの価格帯は、五千円~一万円の差が生じているのだから差別化には成功したと言えるだろう。さらには、開発者側に配慮し、ソフトの開発を容易にしたこともGCの差別化戦略の一環だと言える。
このように、任天堂はGCを徹底的に差別化をして、PS2・Xboxとは違う特徴を持ったゲーム機に仕立て上げたのである。だからこそ、GCは生き残ると予測出来るのである。
(つづく)
(ライター:菅井) |
|
|