●「月姫」に魅入られた人々
「月姫」というゲームを御存知ですか?
「月姫」は99年冬コミにてTYPE-MOONというサークルから発売された同人ゲーム。選択肢を選びながら読み進めて行くオーソドックスなタイプのアドベンチャーで、イベントグラフィック150枚、グラフィック総数500枚以上、シナリオ枚数5000枚にもおよぶ長編伝奇ビジュアルノベルです。
同人ゲームというと普通のゲーマーにとって若干敷居の高いジャンルですよね。さらにモトネタのあるパロディ作品が主流のその中にあって異色とも言える完全オリジナルの作品である「月姫」。そもそも同人ゲームを特にプレイしたことの無い私にとって、そんな「月姫」をプレイするきっかけは、一にも二にもネットでの高い評判でした。「高機動幻想ガンパレードマーチ」等、最近の真に面白いゲームはネットでの評判から人気が出ていましたので、ネットでの評判にはよく耳を傾けていた矢先の事だったのです。ビジュアルノベルという同ジャンルのゲームの中で最高傑作と名高い数々のゲームと、その面白さを比較され、尚且つ決して引けを取っていないという「月姫」というゲームに興味を覚えたのです。
2500円という手軽な値段もあり早速買ってきたのですが、正直この時点では「安かったし、つまらなくてもいいや」的な思いがありました。しかし開始一時間でその考えを完全に改める事になります。今までに一度も血を吸った事が無いという純白の吸血姫アルクェイドと、モノの壊れやすい線「死の線」を視てしまう主人公の遠野志貴。二人の衝撃的な出会いとショッキングな再会から始まる物語は、最初からかなりの緊張感を持って始まり、急速に私をその世界に引き込んでいきました。最初の方は伏線的なセリフや独自の世界観を構築する上での謎の言葉が多く、わからない事が多いのですが、絶妙なテンポと緊張感を持って展開されるストーリーや、キャラクター同士の掛け合いが秀逸で、殆ど気になりません。一癖も二癖もあるヒロイン達の物語が一つの完成された世界観の中で無理無くそして生き生きと綴られ、それを雰囲気に合った音楽と脇役も含めて魅力的なキャラクター達が物語を彩ります。気が付くと時間を忘れてドップリとはまっていました。
シナリオにかなりボリュームがあって、一回のプレイにも結構な時間がかかりますが、ヒロインを一人クリアする毎に明らかになっていく謎と、新たな謎の存在が全く飽きさせません。むしろ、徐々に明らかになっていくストーリーの全貌が知りたくて時間の許す限りプレイを急いでしまいました。
否応無く捲込まれて行く吸血鬼同士の壮絶な戦い。
悠久の過去から続く輪廻転生の過程で起きた悲劇。
自らの過去と呪われた血族。そして、忘れてしまっていた約束。
全ての物語が完結した時、私は今世紀最初で最高レベルの深い感動に包まれていました。
「月姫」は市販されているゲームではありません。専門に活動しているプロが作ったわけではありません。しかし、その完成度の高さは下手な市販の美少女ゲームを遥かに凌駕しています。私が、自信を持って人に勧める事のできる数少ないゲームの一つです。
純白の吸血鬼は微笑む。
「私を殺した責任、とってもらうからね」
是非是非、一度プレイしてみてくだい。(投稿者:藤彩とも)
上記の投稿で見るように、数人の有志によって「月姫」なるオリジナルアドベンチャーゲームが作られた。ネットで話題を呼び、人気を拡大していったこのゲーム。このゲームを制作したサークル「TYPE-MOON」へメールで質問をする機会を得たこともあり、今回より約7回に渡り、同ソフト制作に関してのお話や関わったスタッフのお話を載せていきます。
ゲームの内容というよりは、制作する際の苦労や考え方を中心に質問しているため、ゲームの内容自体を知らなくてもわかるかと思われます。
これらの連載で「月姫」に興味を持っていただけたらと思うと共に、なにか自分でもゲームを創ってみよう、自分で新しいことをやろう、などの励みにでもなれば幸いです。
(つづく)
<TYPE-MOON>
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