【コラム】「オンラインゲームの海外流失 ~韓国進出の裏側~」Part4 |
「取り残される」
『オンラインのノウハウを蓄積しなければ、取り残される』(2001年10月24日
日経産業新聞)。やや悲壮感が漂う、この発言をしたのはスクウェアの和田取締役である。和田氏の言葉の意味はオンラインゲームのノウハウが無ければ、同業他社においてけぼりを食うという意味だろう。しかし、そのノウハウを最も活かす場は、いま日本のソフトメーカーが積極的に進出している韓国ではなく、実は“日本”である。
現在の日本のオンラインゲーム市場は、前述したように数億円規模でしかない。これは韓国とは違い、日本のブロードバンドの普及状態がかなり低いことに由来する。だが、政府はこの現状を打開すべく5年以内に世界最先端のIT国家になることを目標にした「e-Japan戦略」を掲げている。その内容は2005年までに3000万人が高速ネットに、1000万人が超高速ネットに常時接続できるよう、政府がその普及促進を行う、というものだ。仮に、この計画が上手く行けば、日本は世界でも有数のブロードバンド普及国になる。そうなれば、韓国の先例から言っても、当然日本のオンラインゲーム市場は急成長していくと考えられる。折しも、野村総合研究所は2006年までにオンラインゲーム市場は2710億円にまで巨大化すると発表した。しかも、年平均成長率は51%にまでなるという。現状を考えればにわかに信じ難い予測ではあるが、もし野村総研の予想が現実のものになれば、数年後に日本に巨大なオンラインゲーム市場が誕生する事になる。
ソフトメーカーにとって、これほどまで大きいビジネスチャンスは滅多に無い。来るべきビジネスチャンスを十二分に活かし切るためには、なんとしても巨大市場が誕生する前にオンラインゲームに関するノウハウを蓄積しておかなければならないのだ。そうしなければ、スクウェアの和田氏が言うように同業他社に取り残され、巨大化する日本のオンラインゲーム市場で遅れを取ってしまう。だからこそ、日本のソフトメーカーはオンラインゲームに力を入れているのであり、その動きの一部が韓国市場進出となって現れたのである。オンラインゲームの海外流失とも思えるようなソフトメーカー各社の韓国進出の裏側には、日本市場を睨んだ戦略が存在していたのである。
日本の将来性の高さは韓国オンラインゲーム市場でナンバーワンゲーム「リニージ」を抱えるNCソフトが日本に進出している事からも窺える。『ソニーが最大のライバル』(2001年8月7日
日経産業新聞)と話すNCソフトの金社長は、日本のソフトメーカーには手強く映っているだろう。近い将来、起きると考えられている日本のオンラインゲーム市場争奪戦は、韓国企業も交えながら熾烈なものになっていくのは避けられない。
どうやら、ユーザーにとっては面白い時代がやってきたようだ。(おわり)
(ライター:菅井) |
|
|