【コラム】「オンラインゲームの海外流失 ~韓国進出の裏側~」Part3
「真の狙い」

韓国に進出した日本のソフトメーカー。彼らは韓国市場が有している魅力に惹かれて進出したのだが、目的は韓国市場で利益を挙げることだけではない。彼らには利益追求とはまた違った目論見がある。

セガの開発子会社であるソニックチームが開発した「ファンタシースターオンライン」(PSO)は全世界でネット会員30万人を抱え、家庭用ゲーム機を使用したオンラインゲームとしては世界最大の規模を誇る。そのPSOを開発したクリエイターであり同社社長でもある中裕司氏はオンラインゲームに関して『ネットゲームは運営ノウハウが重要』(2001年2月24日 日本経済新聞)であると語った。中氏が「運営ノウハウが重要」と発言した背景には、オンラインゲーム特有の問題がある。オンラインゲームは、これまで普通に販売されてきたゲームソフト(パッケージソフト)とは異なり、オンライン上で遊ぶものだ。そのため、パッケージソフトであれば起きなかったはずの様々な問題が発生する。PSOの発売初日から、オンライン上のトラブルのためユーザーがPSOを遊べない、といった問題が発生したことは、その一例になるだろう。

こうした問題を解決し、安定的にオンラインゲームを提供するためには、それなりの運営ノウハウが絶対に必要になる。中氏はPSOを開発した目的のひとつとして『ネットゲームの運営ノウハウを習得する』(2001年8月29日 日経産業新聞)ためだと述べていることからも、運営ノウハウがいかに大切であるかを読み取れる事ができる。

オンラインゲームを提供するのであれば提供者側にはそれなりの運営ノウハウが要求される。では、その大切な運営ノウハウをどうすれば習得できるのか。セガのように、自分でオンラインゲームを提供しつつ、ノウハウを蓄積するのも一つの方法ではある。しかし、それより簡単なやり方はないだろうか。考えて見ると、自前で習得する以外にひとつある。それは他人に教えてもらう事だ。

韓国ではオンラインゲーム市場は巨大な市場に成長し、オンラインゲーム提供会社も数多く存在している。ということは、それだけ運営ノウハウも確立されていると見て間違いない。もし、オンラインゲームの運営ノウハウが無い企業が、それを吸収したいと考えたならば、韓国企業と提携し、同市場に参入するのはひとつの良い方法だ。そうすれば、韓国でオンラインゲームを提供しているうちに、彼らの運営ノウハウが自然と身に付くからだ。韓国企業と組み、同市場に参入したエニックスの本多社長は『通信環境で先行する韓国での経験は日本でも参考になる』(2001年8月7日 日経産業新聞)と言っている。本多社長が言う「韓国での経験」の中に、オンラインゲームの運営ノウハウが入っていることは言うまでも無い。ハドソンの場合は、自社でゲームのキャラクターとシステムを提供する代わりに、提供先の韓国企業に運営ノウハウを出させている。各企業はそれぞれ独自の方法で、運営ノウハウを吸収しているのだろう。

日本のソフトメーカーが韓国に進出した裏には、韓国市場で得られるであろう利益以外にも、こうした目論見があったのである。もしかすると、こちらの目論見の方が韓国での利益以上に大切なものなのかも知れない。

(つづく)

(ライター:菅井)

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