【コラム】「膨らむ宣伝費 ~その功罪~」Part3 |
●「苦悩」
宣伝がソフトの売上を左右する力を持ち、それが重要視されてくると、当たり前ではあるがソフトメーカーが負担しなければならない宣伝費は高騰する。宣伝費の高騰は、ソフトメーカーにとって頭の痛い問題だ。ただでさえ、開発費の高騰に悩まされているのに、ゲームの開発とは直接的に関連性のない宣伝費まで膨らむのだから。だが、宣伝をしなければせっかく作ったソフトが売れないかもしれないのだから、ソフトメーカーは苦しい。
開発費と宣伝費の高騰はソフトメーカーの負担をさらに重くする。それを何とか回避すべくソフトメーカーのアトラスは、角川書店と共同でゲームを開発する計画があることを明らかにしている。つまり、アトラスは角川書店と共同でソフトを制作することで自社負担分を軽減し、リスクの分散を図っているのだ。自らが、ゲーム開発・宣伝に関わる資金を全額負担するのではなく、他の企業からも負担してもらうという方法は、高騰する開発費と宣伝費を無理に削ることなく、しかも低リスクでソフト開発・販売ができるひとつのやり方であろう。
アトラスとは違った方法でリスクを低減しているのが、コナミの「ゲームファンド
ときめきメモリアル」であろう。ゲーム制作に関する費用を、企業からではなく個人から負担をしてもらう方法もまたリスクの低減を図るひとつのやり方ではある。
これまでゲームビジネスの高コスト体質は高騰を続ける開発費が主たる原因であった。しかし、これからは開発費だけではなく、宣伝費も高騰せざるを得ない状況に変わっていく。宣伝を重要視し、巨額の資金を投入した「鬼武者」の大ヒットはその手法が有効であると立証した、といっても良いからだ。ゲームが売れない時代の中で、ゲームを売るためには、これまでの手法を踏襲していくだけではもう駄目なのである。
その一方で、ソフトメーカーはビジネスの高コスト体質を何とか変えようと努力してきた。コスト高の傾向がこれ以上続くと、企業自体の経営に悪影響を与えかねない危険性があるためだ。だが、ソフトを売るためには宣伝費にも多額の資金を投入しなければならないと「鬼武者」の成功が物語る。コスト高を解消したくとも、コストが膨らむ状況下にあるソフトメーカーのジレンマは当分解決しそうにない。
(つづく)
(ライター:菅井) |
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