【コラム】「膨らむ宣伝費 ~その功罪~」Part2 |
「売れる条件」
ゲームの宣伝費は、ゲーム開発と直接的に関わりがないのであれば、削減しても良いのではないだろうか。ゲームソフトで最も大事なものは、そのゲームが持っている“質”であるはずだ。それならば、ゲームの“質”そのものに影響を与えない宣伝費は、コスト削減の一環として減らされてもさほど問題にはならないと思える。では、なぜ「鬼武者」や「決戦2」では大きな資金が宣伝費として投じられているのか。その答えとしてはカプコンやコーエーが巨額の宣伝費を投入できるほど余裕のある企業だから、と言うこともできるが、それよりもゲームを売るためには宣伝が欠かせないようになってきたからではないか。「ゲームさえ面白ければ売れる時代ではもはや無くなった。だから、宣伝が重要視された」。そう考えられないだろうか。
多額の宣伝費をかけた結果、「鬼武者」がミリオンヒットしたことについて、同作品のプロデューサーである稲船敬二氏は、こう語る。『現在のゲームの売り方ってのが見えてきたような気がします。現在ではゲームが面白いだけでもダメだし、プロモーションだけが良くてもダメ。話題性だけでもダメ。それがしっかりとミックスされて、初めてゲームは売れる。昔のゲームは単に面白ければ売れたんです』(P5
週刊宝島 2001 3.14 NO.496
宝島社)。つまり、稲船氏はゲームを売るためには面白いゲームを作るだけでは駄目で、それが売れるような宣伝活動をし、話題性を生み出して、初めて売れる条件が整うと言っているのである。そのためには、宣伝は必須になる。宣伝費6億円はPS2初のミリオンヒットを生み出すためには、必須の条件であったのである。
宣伝を巧みに使った結果、大成功を収めた例がある。それは、映画「千と千尋の神隠し」だ。2001年7月に公開後、わずが2ヶ月程度で日本映画最高の興行収入を記録し、それをなおも更新し続けている「千と千尋の神隠し」であるが、同作品を制作したスタジオジブリのプロデューサー、鈴木敏夫氏はこの大成功に関して『製作、宣伝、興行が一体となった努力が成功につながった』(2001年10月16日
日経産業新聞)と述べ、宣伝の果たした役割は決して“製作”や“興行”に負けていないことを強調する。確かに「千と千尋の神隠し」の宣伝に協力した企業は、ローソン・ネスレジャパン・徳間書店・講談社・日本テレビ等といった有力企業ばかりである。それらが独自の手法で宣伝に協力したのだから、その宣伝効果は計り知れないほど大きかったと思われる。当たり前の話であるが、宣伝の規模は大きければ大きいほど、人々に認知されやすくなる。しかも、マスコミやコンビニといった人々が普段から日常的に接する機会の多い企業の宣伝なのだから、その認知度は飛躍的に高まったはずだ。その結果が歴史的な成功をもたらしたのだから、宣伝がいかに重要であるかが分かる。
宣伝が今回の成功をもたらす要因を作ったと話す鈴木氏の主張は、こうして見れば納得がいく。それと同時に、カプコンやコーエーが宣伝を重要視する背景には、「千と千尋の神隠し」が証明した宣伝の影響力をソフト販売に活かそうと考えているからなのである。
(つづく)
(ライター:菅井) |
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