【コラム】「膨らむ宣伝費 ~その功罪~」Part1
「鬼武者の成功」

ソフトメーカー大手のカプコンのプレイステーション2(PS2)用ゲームソフト「鬼武者」。このソフトは2001年1月の発売から大きな売上を記録、PS2用ゲームソフトとしては初めて100万本の販売実績を残した。ソフトが売れないと言われ続けている昨今の環境下で、新作ソフトが発売から早い時期に100万本の大台を記録することは珍しい事である。しかし、カプコン側からすれば、ゲーム開発に投じた資金の大きさを考えると、この程度の販売本数では驚いてはいないだろう。「鬼武者」は『構想3年、制作費十数億円、宣伝費6億円』(P3 週刊宝島 2001 3.14 NO.496 宝島社)を掛けた大作ソフトなのだから。ソフトを世に送り出す時は「100万本も充分狙える」と思っていたに違いない。

「鬼武者」の特筆すべき点は、PS2初のミリオンヒットを記録したという販売実績だけではない。その、ゲーム開発にかかった費用、特に宣伝費の大きさも特筆すべき点だろう。制作費が10億円台であるのに対し、宣伝費だけでも6億円を投じてしまっているのだから。仮に、規模の小さいソフトメーカーであれば、6億円もあれば巨額の開発費になってしまうような額である。それぐらいの大金をゲームの制作とは直接関係のない宣伝だけに使っているのであるから、注目に値する。だが、宣伝に大金を使っている所はカプコンだけではない。コーエーもPS2ソフト「決戦2」で3億円弱の資金を宣伝に投じている(Mainichi INTERACTIVE ゲームクエスト キーマン・インタビュー 「コーエー会長襟川陽一氏」 2001)。「決戦2」の場合、宣伝費は「鬼武者」の半分程度の宣伝費であるが、『7億円強』(同)という開発費から考えれば、投入金額は少ないものの比率としては大きなものであると言える。

カプコンやコーエーの例からは、ソフトメーカーが宣伝費に巨費を投じている姿が見えるが、この傾向は間違いなく、コストの増加を招く。ただでさえ、ゲーム開発費が高騰しつつあるのに、宣伝費にまで大きな資金を投じているのだから、当然の結果である。

しかし、その一方でソフトメーカーはゲーム制作に関するコストを削減しようと努力している。代表的な所ではスクウェアが挙げられるだろう。スクウェアの鈴木社長は自ら『高コスト体質からの脱却』(P2 スクウェア アニュアルレポート2001)を目指すと公言し、目的達成にむけて試行錯誤をしているのだ。その他のメーカーでも無駄なコストの削減は大きな経営課題である。カプコンやコーエーも例外ではない。そうであるならば、ゲーム開発とは直接の関連性を持たない宣伝費は削られても良いのではないか。なぜ、「鬼武者」や「決戦2」には、宣伝費に大きな資金が投じられたのであろうか。

次回からは、それを考えると共に、最終的に宣伝費が今後、ゲーム業界にもたらす影響についても考察することにしたい。

(つづく)

(ライター:菅井)

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