【コラム】「スクウェアの決断 ~本業回帰へ~」Part3 |
「スクウェアの今後」
SCEをオーナーの宮本氏に次ぐ第二位の大株主に迎えたことで、スクウェアの今後はどうなるのであろうか。一般的には何らかの影響があると見られている。特に『SCE以外のゲーム機へのソフト供給が難しくなることが予想される』(LYCOSニュース
「スクウェアが大幅高-SCEの資本参加を好感(ブルームバーグ)」
2001年10月10日10時43分)という声がその最たるものだろう。では、本当にSCEが大株主になったことでSCE以外のゲーム機にソフトを供給できなくなってしまうのか。
SCEの久多良木社長は今回の出資に関して次のように述べた。『スクウェアさんについては、プレイステーション、プレイステーション2だけでソフトを作ってくれ、と頼むよりも、とにかくおもしろくて、誰でも楽しめるソフトを出してほしいとお願いします』(ファミ通.com
「SCEとスクウェアが緊急記者会見!」
2001年10月9日)。この主張をそのまま受け取ると、スクウェアがプレイステーション(PS)・プレイステーション2(PS2)以外のゲーム機にソフトを供給する事に異論は無いと言っているように聞こえる。スクウェアの鈴木社長も任天堂のGBAなどの携帯ゲーム機にソフトを供給するべく、任天堂と交渉をしている、と会見で明らかにしていることからもSCEはPS・PS2以外にはソフト供給を認めないわけではないと思われる。では、なぜSCEはそこまで柔軟な姿勢でいるのか。その一つの理由として、SCEの微妙な出資比率が背景にあるからではないだろうか。
SCEがスクウェアに出資した金額は約148億円であり、出資比率は18.6%である。しかし、この「18.6%」という数字は企業会計上、非常に微妙な数字なのである。世界で最も支持されているアメリカの会計基準を用いて考えれば、出資比率が20%に満たない企業に対して出資元の企業は『実質的な影響を与えることができない』(P148
「MBAファイナンス」 グロービス・マネジメント・インスティテュート ダイヤモンド社 1999年)とされている。
逆に出資比率が20%以上50%まで上昇すると『政策レベルで実質的な影響を与えることができる』(同)とされ、出資元企業の“関連会社”と呼ばれる。仮にSCEが20%の出資比率を確保していれば、スクウェアを”関連会社”として扱う事ができるのだが、出資比率18.6%では、出資先企業に実質的な影響を与え、関連会社化できるとされる20%にはわずかではあるが及ばないのだ。これでは、SCEはスクウェアに対して影響力を行使することができない。しかも、筆頭株主にはSCEの持ち株の倍以上を保有するオーナーの宮本氏が依然として控えているのだ。どちらがスクウェアに対して強い影響力を有しているのかは明白であろう。
以上の事柄をまとめると、スクウェアがSCEに出資を仰いだことにより、SCEの政策に縛られPS・PS2以外のゲーム機にゲームソフトを供給する事ができないという事態には陥らないと考えられる。久多良木社長も、スクウェアには影響を与えられないことは理解しているようで、今回の出資に関して『経営権をとる云々ではない』(NIKKEI
NET 「“ソフト開発力が落ちていた”――スクウェア社長らの会見内容」 2001年10月9日)と述べている。
SCEの出資によってスクウェアの行動に「今後チェックが入る」との懸念は杞憂に終わりそうである。(つづく)
(ライター:菅井) |
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