【コラム】「スクウェアの決断 ~本業回帰へ~」Part2
「“大株主SCE”をなぜ誕生させたのか」

スクウェアが映画事業の失敗によって生じた資金不足を埋めるべく行動した結果、「大株主SCE」が誕生する事になった。では、なぜスクウェアはSCEを選んだのであろうか。ここでは、スクウェアがSCEを資金調達先として選んだ経緯を推察してみることにしたい。

巨額の資金が不足し、業界関係者に『資金繰りに窮していた』(2001年10月10日 日経金融新聞)と言われるほどの状況を脱するために、スクウェアはあらゆる資金調達方法を模索していたと思われる。それだけに、最初から「SCEに大株主になってもらうことで資金不足を解消する」という一つの方法しかもっていなかったとは考えにくい。SCE以外の企業からの出資金や、一般投資家からの出資金

あるいは銀行からの借入金で資金不足を解決する道も当然検討していただろう。その中で、スクウェアがあえてSCEを選んだ理由は、SCE以外にスクウェアの資金需要を満たしてくれる所が無かったからではないだろうか。

スクウェアが複数挙げていた資金調達先として、まず始めに消えたのが銀行であろう。一般的にゲーム会社は銀行借入をあまりしない。しない、というより「借りられない」と言ったほうが良いのかもしれない。それはゲーム会社が行っているゲームソフト事業の不安定さなどを銀行に嫌がられているからだ。そのために銀行は短期間の資金貸出には応じるものの長期間の貸出は渋る傾向にある。多くのゲーム会社の長期の借入金は数億円から数十億円の間だ。無借金企業だってある。スクウェアの欲している資金はおおよそ映画事業で失った金額であろう。すると、100億円を軽く超えてしまう。この巨額の資金を借り受けるのは簡単ではない。こういったことを考えると、スクウェアの執るべき策はどこかの企業からの出資、もしくは一般投資家からの出資に頼る以外に無くなってしまう。

だが、日経平均株価が一万円の大台を割り、スクウェア株も上場来安値を更新している状況では、一般投資家から新たな出資は期待できない。それでは、スクウェアが提携しているナムコやエニックスに出してもらうという方法もあるが、両社の企業規模や現状を考えると難しい。ナムコはようやっと赤字経営から立ち直ってきた所であるし、エニックスは今期減収が見込まれているのだ。自社の経営でさえ苦しいのに、他の企業を助けるための資金を出すなど無理な話なのだ。そうなると、ゲーム業界の中で企業規模が大きく、資金が豊富にある企業が有力候補になる。例えば、コナミや任天堂・SCEなどであろう。しかし、コナミは既にタカラやハドソンなどの上場企業に多額の資金を出資済みであるし、任天堂との関係改善の兆しが見えない状況下では、スクウェアに残された道はSCEに頼む以外に方法が無かったのである。

スクウェアが大株主としてSCEを選んだ理由を推察すると、八方ふさがりのスクウェアを救えるのはSCE以外にいなかった、と言えるだろう。では、SCEを大株主として迎える事で救われたスクウェアは、今後どうなるのであろうか。それを次に考える事にしたい。

(つづく)

(ライター:菅井)

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