【コラム】「ときめきメモリアル3、発売へ~ゲームファンドの再評価~」Part2 |
「生まれた背景」
「ゲームファンド
ときめきメモリアル」(ときめもファンド)は、一般にはゲーム開発費負担を少しでも軽減するために誕生したと思われている。最近のゲーム業界を取り巻く環境から考えれば、こう考えるのは間違いではない。
新しいゲーム機が登場するたびに高性能化している現状は、ソフトメーカー側の負担を以前とは比べものにならないほど大きくさせた。負担の主なものは、ゲーム機の高性能化に伴う開発期間の長期化と開発資金の大規模化であろう。このような状態はソフトメーカーにとって決して好ましいものではない。そもそも、ソフトメーカーが商品にしているゲームソフト自体、売れるかどうか市場に出してみないと分からないリスクの高いものなのだ。それなのに、ソフト開発の段階で大規模な資金が必要になってしまっている。これでは、ソフトメーカー側は堪らない。こうした事情があったからこそ、ときめきファンドは『自社の資金負担を軽減』(2000年10月26日
日本経済新聞)するものだと評価されているのである。
だが、ときめもファンドが誕生したのは、もう一つの理由があったからではないだろうか。それはそのまま、なぜコナミがゲームファンドなるものを始めたのかという答えにもなる。
ゲーム開発のリスク低減の為にときめもファンドがあったとする一般的な見方は確かに間違いがないし、目的がそれであったのは事実だろう。しかし、ときめもファンドが生まれた背景には、近年活発化しているコナミの安定化志向も関係しているのではないか。
コナミは、ここ数年、家庭用・業務用問わずヒットゲームを次々に出し、非常に好調だ。2002年3月期こそ前期より悪くなると予想されているが、2001年3月期までの業績はゲーム業界でもトップレベルだ。そんなコナミでさえも、わずか数年前の1995年3月期には100億円を超える巨額の赤字を出し、業績不振に苦しめられたことがある。短い期間の間で地獄と天国を味わったコナミが学んだ事は、ゲームビジネスの好不調の差の激しさであろう。この経験からコナミは、ゲームビジネスの波がコナミ全体に与える影響を何とか平らにすべく行動するようになる。コナミの北上常務は『我々がやっているのはヒットビジネスなのでどうしても浮いたり沈んだりします。我々にとっても頭の痛い問題ですが、どうやって波をなくして安定させるかを常に課題としています』(P50
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2000)と言い、安定することの重要性を強調する。2000年から2001年にかけて、コナミはそれを実践するかのごとく、ゲームビジネス以外の事業を積極的に手掛けるようになった。一例を挙げれば、フィットネスクラブ運営企業のピープル(現コナミスポーツ)やアメリカのカジノ用システム開発企業を買収したことなどだろう。
この安定化を目指すコナミの考えた方はゲーム開発費にも及んでいると見て良いのではないか。これまで、ゲーム開発費は自社で賄ってきたが、今後もいままでと同様に自前で用意できるとは限らない。開発費の高騰によって、コナミ一社では支え切れなくなるかもしれないし、コナミ自体が資金不足に陥ってしまう可能性だってないとは言えないのだ。そういった不安定さはコナミからすれば、無くしておきたいリスクの一つである。だからこそ、一般からゲーム開発費を集めるときめもファンドが、コナミから生まれたのではないだろうか。つまり、収益基盤を安定させるだけではなく、資金調達の面でも安定化させたいというコナミ特有の理由が、ときめもファンド誕生に作用していると考える事ができるのだ。
(つづく)
(ライター:菅井) |
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