【コラム】「Xboxにのせた期待 ~その落差と背景~」Part3 |
「期待派の参入理由」
Xboxの普及に懐疑的なメーカーに対して、逆に高い期待をかけている所もある。その代表格がテクモであろう。テクモは自社の看板ソフトとも言える「DEAD
OR
ALIVE」(DOA)シリーズの最新作「DOA3」をXboxに投入すると発表した。「DOA」シリーズはこれまで、「DOA」「DOA2」とあるが、それぞれトータルでは50万本、150万本の出荷があるビックタイトルである。テクモにとっては、自社を代表するソフトである「DOA3」を、まだ発売もされていないXboxに供給するのであるから、テクモ側のXboxへの高い期待が読み取れる。しかも、「DOA3」はXbox以外で発売する予定は無いと言う。つまり、PS2やGCなどには移植されないのだ。これらの事を考慮すると、テクモは全体的な評価が芳しくないXboxに対して強い期待感を持っていると言えよう。では、どうしてテクモはまだ未知数であるXboxにそこまで期待をするのであろうか。テクモがXboxに力を入れる理由。それはコーエーの成功にある。
コーエーはPS2の登場で最も恩恵を受けたメーカーの一つである。ソフト不足が心配されていたPS2発売時に大型ソフト「決戦」を投入、40万本を超える本数を出荷することに成功した。その後も、「真・三國無双」というソフトも発売し、早い時期に30万本を上回る本数を出荷した。コーエーの堀口常務はこの結果について『パソコン向けの転用ではなく、最初からゲーム機用に出したソフトとしてはかつてない成功』(2000年10月4日
日経金融新聞)と述べている。
コーエーのソフトが、このかつてない大成功を納めた理由の一つとして、PS2発売後、暫く続いたソフト不足の時期に、優良・大型ソフトを供給した事があろう。PS2と同時発売の「決戦」は、その他の同時発売の大型ソフトが少なかったため、相対的に大きな注目を浴び、大ヒットする一因となった。それと同時に「決戦」のヒットは、コーエーの知名度を向上させることになる。「真・三國無双」のヒットは「決戦」の成功に依るところもあるだろう。
ソフト不足の新しいゲーム機に大型ソフトを投入すれば、ソフトが不足しているために高い注目を浴び、ヒットする。「決戦」「真・三國無双」のヒットは、こうした成功例を作り出したのだ。
テクモが、売れ行きが厳しく、ソフトも不足していると言われているXboxに自社の看板ソフト「DOA3」を本体と同時に発売する目的は、このコーエーの先例があるからだ。テクモの板垣執行役員は、Xboxには「DOA3」以外にあまり良いソフトがないと評されていることについて、こう答えている。『計算の範囲内だ。とてもよいことではないかとも考えている。(それは)“DOA3”が“Xbox”で最も注目を集めるソフトになるからだ。“DOA3”はまず米国、ついで日本、来春には欧州やオーストラリアなどで販売されるが、全エリアで“Xbox”本体と同時発売だ。“Xbox”を買った人は、みんな“DOA3”を買ってもらえるのではないかと期待している』(ZDNet
Japan 「“DOA3”で“Xbox”に賭けるテクモの戦略と成算」
2001年6月6日)。この板垣執行役員の発言から考えるに、テクモは明らかにコーエーの先例を意識していると言えるだろう。
このようにXboxに期待するメーカーが参入した訳は、PS2登場時にコーエーが見せた成功をXboxにて再現するためだったのだ。だからこそ、テクモを筆頭とする期待派メーカーは、業界全体のXboxへの評価が余り良くないにもかかわらず、ソフトを供給することにしたのである。
彼らはXboxの登場を「大きなチャンス」と見ている。(つづく)
(ライター:菅井) |
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