【コラム】「メーカーの新たな試み 脱ゲーム事業化の果てにあるもの」Part4
「世界企業への道」

2001年2月15日の日本経済新聞に、ゲーム会社についてこんな指摘があった。

『日本はゲームソフトを世界に供給しているが、米ハリウッドのように一つのアイデアから多数のヒット作品を生み出す投資効率を考えた経営が根付いていない。時には巨額の投資負担に耐えながら、安定した収益力を堅持する。日本のゲーム会社が世界へ飛躍するために欠かせない条件である。』

日経新聞の主張は、ゲームソフトを作り出すためのアイディアが、ゲームソフトだけに使われ、それ以外に生かされていない日本のソフトメーカーの経営方針に疑問を投げかけているものである。

単一のアイディアから多数のヒット作を生み出すやり方が根付いているもののひとつとして、アニメがあろう。アニメの場合、一つの作品を放映、または上映しただけでは決して終わらない。そのアニメ作品を多方面に広く利用するのが一般的だ。例えば、アニメをビデオ・DVD・LD化して販売したり、アニメに登場するキャラクターを活かしたキャラクター商品の製作・販売などは、ごく当たり前に行われている。アニメもゲームソフト同様に総じて開発費は高く、ヒットするかどうか事前に予測する事は難しいハイリスクなビジネスである。だから、アニメを一つの利用法で留めておくことはせずに、様々な形で利用する事で、リスクを出来うる限り避けているのである。

要するに日経新聞は、ソフトメーカーはアニメと同じような戦略を執って、収益の安定化を図るべきであり、それが世界企業への飛躍の道であると提言しているのである。

そんな助言を知ってか知らずか、ソフトメーカーは収益の安定化のために新規事業を手がけ始めている。日経新聞の言う通りに、安定した収益を手に入れようと動き出しているのだ。だが、おそらく、この一連の動きは世界企業への飛躍を目指したために行われたものではないだろう。収益の安定化のための施策が、世界企業へ飛躍するための第一歩であるとは、考えてもいなかったはずである。なぜなら、今回の新規事業は、あくまでも、以前より高まったゲーム事業におけるリスクを少しでも和らげる目的で、立ち上げられたものであるからだ。「飛躍」より「安定」の方を手に入れようとしていたソフトメーカーが、「世界企業」という大きな目標まで視界に入れていたとは考えにくいのだ。

こうしてソフトメーカーは結果として、世界企業への道を踏み出した事になった。決して望んでいた訳ではないゲーム事業のハイリスク化が、世界企業への第一歩になるのであるから、世の中、何が幸いするかわからない。「ピンチは最大のチャンス」という言葉があるが、まさにゲーム事業のハイリスク化によって訪れたソフトメーカーのピンチが、世界企業への飛躍のチャンスになったのである。

果たして、ソフトメーカーは、このチャンスを活かすことが出来るのであろうか。その答えはすべて、収益の安定を達成するために立ち上げた新規事業が鍵を握っている。

図らずも新規事業には、とてつもない重責が課せられた感があるが、ゲーム業界の未来のためにも、成功することを祈るばかりである。

(おわり)

(ライター:菅井)

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