「基本路線」
任天堂の基本路線とは、ゲームソフトの少数精鋭主義である。これは、数少ない選りすぐりのゲームソフトしか任天堂のゲーム機で出さないことで、粗悪ソフトをなくし、ユーザーに不利益を与えないようにするのが目的である。粗悪ソフトを少しでも減らせるのであれば、極端な話、他社のゲームソフトメーカーには参入してほしくない、とまで考えている。それはソフトの数が多くなればなるほど、任天堂の良質なゲームソフトとは違う粗悪ソフトが世に出る可能性が高くなるからだ。
「任天堂のゲーム機は第一に、ウチが開発するゲームソフトのためにある」(1997年6月27日 朝日新聞)。
今西紘史取締役が、こう話していることからも、任天堂の少数精鋭主義が、実は自社ソフト優先主義にもつながっていることがわかる。
なぜ、任天堂はこうした戦略をとるのか。それは昔、アメリカでそれまで繁栄を誇っていた家庭用ゲーム市場が粗悪ソフトの氾濫によって、ゲーム自体がユーザーから飽きられ、家庭用ゲーム市場が一夜にして崩壊してしまったという暗い過去が教訓になっている。アメリカで起きた失敗を日本で起こしてはならない。そう考えた任天堂は市場崩壊の元凶であった「粗悪ソフト」を市場に出してはならないと判断したのであった。その目的を達成するためには、自社が率先して優れたソフト作り続けて、たとえ他社がソフトを開発したいと申し出ても粗悪ソフトが出る可能性を考慮して断る方針が生まれたのである。すべては市場崩壊をさけるために、である。
(つづく)
(ライター:菅井) |