「完全撤退」
2001年3月19日付の日本経済新聞(日経新聞)に衝撃的なあるニュースが掲載された。それはゲーム業界全体にとって大変好ましくない決定を伝えるニュースであった。何かといえば、「カプコン、業務用ゲームからの撤退を決断」である。日経新聞で報道された主な内容は次の通りである。
・年内に業務用ゲームソフト事業から撤退する。
・開発中のソフトを除き新作ソフトの開発を見送る。
・家庭用ゲームソフト事業に経営資源を集中させる。
・旧作の販売は当面継続する。
同記事にはカプコンが業務用ゲームソフト事業から撤退する理由として、カプコン内における業務用ゲームソフト事業の売上の急落や、業界全体の今後も回復は見込めないことをあげている。
2001年3月期の業務用ソフトの売上高は39億円(見こみ額)と、最盛期の規模に比べると、額で5分の1、単独売上高に占める割合では30%から10%程度にまで落ち込んでいる。この程度の規模であるなら、会社側も事業を続けるメリットが少ないと判断したために、今回の決定に至ったと思われる。
「誤報?」
日経新聞が衝撃的なニュースを報じてからまもなく、最新のゲーム情報を伝える各種ホームページにある一文がアップされていた。意外な事に、先ほど日経新聞が伝えたニュースを否定するカプコン側の声明であった。
「本日、一部報道機関において当社業務用ゲームソフト事業からの撤退する旨、報道がなされておりますが、弊社から公式に発表したものではなく、現時点で正式に決定されたものではありません。当社といたしましては、来期は業務用部門を縮小し、家庭用ゲームソフト事業に注力するものの、引き続き、業務用ソフトも供給してまいります。(カプコン 経営企画室 証券業務チーム)」(2001年3月19日
「ファミ通ドットコム」より)
カプコン側のすばやい否定声明で、この日経新聞の報道は誤報であると思われた。実際、報道機関が誤報を流す事は少なくない。最近では、あるアメリカの報道機関が「任天堂がセガを買収する」という嘘とも本当ともつかないニュースを掲載し、両社から抗議を受けた事がある。この先例を鑑みると、今回のカプコン撤退報道も誤報に見えてしまう。
では、カプコン側の否定でこの一件は収まったといえるのであろうか。そう簡単にはいかない、と筆者は考える。それは何故だろうか。どうして、当事者が否定したことを筆者は疑うのだろうか。次の章からその理由を考えてみたい。
(つづく)
(ライター:菅井) |