【コラム】「資本力優位の時代 ~変わる業界地図~」Part2
「地位の変化」

市場規模の縮小が続くゲーム市場にあって、唯一の成長分野と期待されているのがオンラインゲームである。三菱総研の試算によると、2005年度の時点でオンラインゲームの市場規模は1300億円を上回るという(注6)。この試算が正しければ、2002年度の時点で300億円程度しかなかった市場が、わずか数年で約4倍強に急成長することになる。潜在的に高い成長力を持つオンラインゲーム市場は、ソフトメーカーにとってかなり魅力的な市場だろう。

しかし、オンラインゲーム市場に参入するためには、前提条件としてかなりの資金が必要になる。スクウェア・エニックスの場合、同社がオンラインゲーム事業へ投じた資金は『約六十億円』(注7)とも言われている。もちろん、オンラインゲームを開発するためには必ずしもスクウェア・エニックスが投じたほどの巨額の資金が必要になるわけではない。だが、それでも『一年以上の時間と、人件費を含め数億円のコスト』(注8)が掛かってしまう。それだけの金額を出せるような豊富な資金力を持つ企業であれば問題はないが、企業体力に限界があるソフトメーカーも少なくない。果たして、オンラインゲームの開発費として数億円もの資金的な負担ができる企業がどれほどあるのだろうか。

仮にあるソフトメーカーが、質の高いオンラインゲームを生み出す企画力、開発力が持っていたとしても、資金的な問題により開発を断念せざるを得ない事態になることも十分に考えられる。資本力が弱く、高額の開発費を捻出することができないソフトメーカーは、例え企画力や開発力があったとしても、オンラインゲーム市場がもたらす恩恵に与れない可能性が高いのだ。

開発費の増大に伴うこうした問題は、パッケージソフトの場合でも同じである。『ファミコン時代で平均2000万~3000万だった開発費が、PSで1億円以上に跳ね上がり、現在では最低3億円近くかかる』(注9)。ゲーム機の高機能化に伴ってオンラインゲームだけではなく、パッケージソフトですら多額の開発費が必要になってきているのだ。こうした事から進化を続けるゲーム機に伴い、ソフトメーカーが持つ資本力の重要度が以前よりも高まってきた、と言うことができるだろう。

ゲーム市場の草創期であれば、開発コストが高くない分、資本力よりもまず企画力と開発力が必要とされていたが、現在では開発費の高騰により、いつの間にか両者の地位が入れ替わりつつあるのだ。

では、資本力優位の時代がゲーム業界に何をもたらすのか。次にそれを推測してみることにしたい。
 

注6…『ダイヤモンドLOOP 2003年9月号』 P47 ダイヤモンド社
注7…2002年1月10日 日経金融新聞
注8…2002年6月13日 日経産業新聞
注9…『ダイヤモンドLOOP 2003年9月号』 P52 ダイヤモンド社

(つづく)

(ライター:菅井)

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