「FF11の将来」
FF11は失敗であると言われつつも、一定の評価ができる。しかし、最終的にFF11が成功するのか失敗するのかは、オンラインゲームの問題点として指摘されている「開発費の回収」「維持管理コスト」などの事柄に対して、どう対峙するかに掛かっているだろう。FF11が中長期で繁栄を続けるためには、こうした問題をクリアしていかなければならない。
オンラインゲームがパッケージソフトと違う点は、ソフトを継続的に利用してもらうことで常に利用料を徴収できる所にある。だが、それは「開発費の回収が長期化するリスク」と「ゲームを維持管理していくコスト」を新たに抱えてしまうことでもある。回収期間が長期化すればそれだけ開発費を回収できない可能性が高くなる。最悪の場合、開発費が回収できないばかりか、維持管理コストだけが掛かってしまうことにもなる。FF11も当然ながらこうしたリスクにさらされている。開発費に『ゲーム自体が30億円、通信技術関連10億円、サーバーなどの機材20億円、合計60億円』(注1)もの大金が掛かっている同ゲームには深刻な問題だ。これだけの金額を回収するには短期間では無理だろう。どうしても長期化は免れない。そうした問題をすべて解決するためには会員数の拡大しかない。会員数が多ければ多いほど、短期間での回収が可能になるからだ。
FF11の場合、会員数はサービス開始以来、順調に増加している。5月に5万人であった会員数が10月の時点で12万人に増加している。5ヶ月間で2.4倍にも増えている会員数を単純に月当りの増加率に換算すると、毎月約20%増になっている。しかも『これまでの退会者は数百人』(2002年10月8日
日経産業新聞)というきわめて高い定着率がある。
さらに言えば、FF11は月々の利用料だけではなくFF11のソフト自体も販売して、その売上も収入源にしている。ソフトを販売することで少しではあるが、回収期間を短くすることができる。
仮にソフト自体を無料化し月々の利用料だけを収入源にしたとしても、ソフト販売の売り上げはゼロになるが会員数はさらに増加するはずだ。ソフトが有料であるにも関わらずこれだけの会員数を集められるのであるから、無料になれば会員数の増加に拍車をかけるだろう。会員数を増やすことがオンラインゲームを運営する側にとって最も重要なのだから、無料化したとしても長期的にはプラスになる。
将来的にFF11が成功できるかどうかは、現状の会員数の増加率と定着率をどう改善・維持を図っていくかにかかっていると言えよう。会員数の増加に関しては、スクウェアは動き始めている。パソコン版のFF11を発売したのはその一例だ。しかも、その効果はすでに現れている。
今年11月7日にパソコン版FF11が発売されたが、同月13日にスクウェアが発表したパソコン版の会員数は『3万人』(注3)であるという。10月の時点で12万人であった会員数は11月現在で15万人に増え、増加率は前月比約25%増となった。これまでの増加率を多少ではあるが上回っている。この勢いが継続すれば、今年度中にも採算ラインである20万人を超えるだろう。もし、そうなった時FF11に与えられてきた否定的な評価を改める必要がある。
採算割れの水準であるからこそ、FF11は時期尚早である、あるいは失敗だと言われつづけてきたのだ。確かに、開発費も含めた全体の投資額を回収するのはまだまだ先だ。長い道のりになるのは間違い無い。しかし、今はオンラインゲームへの投資を行う期間であると考えるべきだろう。投資期と収穫期を分けて考えるとするならば、オンラインゲーム市場が未成熟ないまの日本市場は投資期であると言える。十分な投資をする時期にもう回収することばかり考えていては、自ら将来の収益源をつぶしてしまうことにもなりかねない。投資額の回収は、しかるべき未来に考えるべきものだ。今は、オンラインゲームが採算ラインに乗せることがもっとも重要であるはずなのだ。
FF11の黒字化が見えてきた今、FF11への評価を再考する時期にきている。
注3 (「スクウェア:中間黒字転換、通期も上方修正-欧米向けソフト好調“2”」 ブルームバーグ 2002年11月13日)
(おわり)
(ライター:菅井) |