【コラム】「ようこそ、ゲーム業界へ ~新規参入必要論~」Part2 |
「“恩恵” ソフト編」
ゲーム業界にうまみを求めて、新たに参入した企業が、ゲーム業界自体に与えたものは何か。もしかすると、彼らはゲーム業界にはマイナスの影響しか与えてこなかったのだろうか。
仮に、そうだとするとゲーム市場は常に流入してくる新参者によって食い荒らされ、「限られたパイの奪い合い」という過当競争が引き起こされていた可能性がある。『撤退する会社以上に、新規参入する会社はまだまだ多いくらいです』(P210
「ゲームの大學」 著平林久和・赤尾晃一 メディアファクトリー
1996)という傾向はなかなか変わるものではない。MSやディズニーの動きを見ると、そう考えるのが妥当に思える。
もし、新規参入が継続する状況が悪い方向に流れていれば、すべてのソフトメーカーが熾烈な競争に巻き込まれ、業界内が“勝者なき争い”の場になっても不思議ではなかっただろう。しかし、ゲーム市場の現状を見ると喜ぶべきことに、新規参入者との不毛な過当競争は起きていない。
確かに、新規参入者の増加による競争激化が無かったわけではない。有名なソフトメーカーも90年代に数社、破綻の憂き目にあっている。だがそれでも、全メーカーを疲弊させるような深刻な事態にまでには至っていない。ここ数年こそ、伸び悩みの傾向があるがゲーム市場はこれまで、右肩上がりの上昇トレンドを描いてきたのだ。つまり、新規参入者が新たに入ってきても市場全体は伸びつづけていたのである。彼らは自分達が参入することで“限られたパイの奪い合い”のような過酷な競争を持ち込まなかったのだ。
では、新規参入者は業界には何をもたらしのだろう。マイナスでは無いとすれば、プラスであろうか。過去を振り返ってみると、どうやら彼らは業界に利益をもたらしていたようだ。
彼らは業界にマイナスの面よりも、プラスの効果をより多くもたらしたと考えられる例が過去にある。そのひとつが「ポケットモンスター」(ポケモン)を作りだした「ゲームフリーク」だろう。このソフトメーカーは89年にゲーム市場に参入し、のちに世界的ヒットになるポケモンの開発の中心を務めたソフトメーカーである。
ゲームフリークが中心となって作り上げたポケモンが発売されると、その優れたゲーム性が徐々に人気を集め、脅威的な販売本数を記録するようになった。全世界での総販売本数は6000万本以上というから、その人気振りが伺える。このポケモンの大ヒットにより、ゲーム市場は大いに潤った。具体的には、ゲームボーイ(GB)の復活が挙げられる。発売から約7年が経ち、すでに役目が終わったと思われていたGBが、ポケモンの登場によって再び脚光を浴びるようになったのだ。ハードの出荷台数もソフトの販売本数もポケモンに引っ張られる形で、再び加速をするようになった。
GB市場の復活を受けて、他のソフトメーカーも大いにその恩恵に浴することとなる。ポケモンをヒントにしたゲームが数多く作られ、その中でヒットするソフトが多数出たのはポケモンのお陰だと言って過言ではないだろう。しかも、GB市場の復活によって発売タイトルを増やすことができ、収益拡大の機会を得たのだから、他のソフトメーカーにはありがたいことだったのだ。
このように、市場の成長と業界の発展に貢献できる新規参入組はきちんといるのだ。もし、ゲームフリークがポケモンを作っていなかったら、GB市場の新たな発展は望めなかったはずである。新規参入者は、明らかにプラスの効果をもたらしたのだ。
(つづく)
(ライター:菅井) |
|
|