「特化型の成功」
『特化したものを持つことが大切です』(Mainichi INTERACTIVE ゲームクエスト キーマン・インタビュー
「ゲームアーツ社長宮路洋一さん」
2002年)と語るゲームアーツの宮路氏は、特化型の代表としてコナミを挙げる。『コナミのように開発部門を完全に切り離し、本体は管理部門に徹するというやり方がモデルケースになると思います』(同)。総合型を「厳しい」と判断した代わりに、コナミのような企業が良いと宮路氏は考えている。
コナミは一見すると、スクウェアと同じ総合型を目指しているように見える。先日、コナミは中堅のソフトメーカーである「元気」に対し出資をし、自社の関連会社としたが、これもそのように思われても仕方が無い出来事だ。元気はカーレースゲームなどを手掛けているソフトメーカーで、この提携により世間的には『カーレースゲームや剣術ゲームなどコナミが手薄だったゲームジャンルの補強につながる』(2002年1月31日
日経金融新聞)と見られている。コナミは他にも、携帯電話向けのゲームに強いハドソンや、低価格ゲームを得意とするサクセスにも資本参加をしている。表面上は、コナミはあらゆるゲームジャンルを手にし、総合型になろうと動いている、と言えるのだが、実はコナミは総合型メーカーではないのだ。
コナミがいわゆる「総合型」と違う所は、自社内で開発部門を持っていないことである。コナミは開発部門を分離・独立させたり、余所から持って来たりすることで、数多くの開発子会社・関連会社を抱えている。コナミ大阪やコナミジャパン、ハドソンや元気などが良い例だ。つまり、コナミグループとしては形として総合型にはなっているが、そのグループを構成する一社一社はそれぞれ特化型メーカーなのだ。たとえば、コナミ大阪は「実況パワフルプロ野球」シリーズを抱え、スポーツゲームに強く、コナミジャパンは「メタルギアソリッド」シリーズを持ち、アクションゲームに強い。ハドソンは携帯電話向けのゲームに強みがあり、元気はカーレースゲームが得意だ。こうしてみると、各社規模は小さくとも自らの得意分野に特化した特化型の企業であることがわかるだろう。コナミの本質は、実は特化型企業なのである。
では、なぜコナミは特化型企業をめざしたのか。それは『クリエーターを得意分野に専門特化させ、スキルアップを狙った』(P62 「プレステ2
ネット戦争」 著田中秀雄 JMAM
2000)からであり、それによってソフト開発力を一層強化しようと考えたからである。コナミの試みは結果を見れば成功と言う他ない。コナミの業績は特化型を志向し、分社化を進めた1995年から飛躍的に伸び、2001年3月期には過去最高となる約200億円の利益を記録したのだ。これは、規模の大小がもたらしたものではなく、特化型を選んだ末の好成績だと言える。
規模ではなく、特化する事が大切であると説く宮路氏の主張は、コナミの成功が説得力を持たせている。
(つづく)
(ライター:菅井) |