【コラム】「ソフトメーカーのサバイバル術 ~規模か戦略か~」Part1
「総合型は難しい」
 
「近年、ゲームの開発にかかる費用が以前と比べて高騰しつつある」。プレイステーション2(PS2)発売前後から、こう指摘されることが多くなったゲーム業界。PS2の高性能化が招いた弊害でもあるが、開発費の高騰はソフトメーカーにとっては頭の痛い問題である。

開発費の大部分は人件費が占めると言われ、「開発費=人件費」であると称してもおかしくはない。開発費が高騰したということはゲームを制作する過程において、それだけ多くの人間が必要になった証拠でもある。その中でも開発者をより多く動員しなければならないものが「グラフィック制作作業」であろう。ハードがプレイステーション(PS)からPS2へ変わり、最も目に見えて進化した性能の一つに描写性能がある。ハードの進化によってグラフィックが一層きれいに美しくなったのだが、その反面ゲーム制作の手間が増えるようになり、開発費が高騰する一因にもなっているのは事実である。つまり、昨今指摘されている開発費の高騰の原因の一つとしてグラフィックの進化が挙げられるのである。

グラフィックの進化が、必要以上に演出過多のゲームを多く生み出し、それが開発費の高騰を引き起こしていると考えている人物がいる。ゲームアーツ社長宮路洋一氏だ。宮路氏は開発費が増大する現状をこのように分析する。『(開発費が高騰した)最大の理由は、グラフィックに凝ったこと。グラフィックは、ハリウッド映画を見ればわかるように、お金を掛ければいいものが作れます。だから、演出に凝るゲームは、開発費が高騰して当然なのです』(Mainichi INTERACTIVE ゲームクエスト キーマン・インタビュー 「ゲームアーツ社長宮路洋一さん」 2002年 カッコ内筆者)。

グラフィックの進化により、ゲーム開発費が高騰する結果になったが、これは中小規模のソフトメーカーにとっては大きな問題であろう。大手と違い資金的にそれほど余裕がないからだ。それゆえ、ゲーム業界内での企業の淘汰・再編が進むと予想する声が強い。だが、宮路氏は『規模は関係ありません』(同)と断言する。規模よりも大切なものが「特化」であり、それがなければ大手のソフトメーカーでも厳しいと主張する。『プロレスゲームならばどこにも負けない、というように特化したものを持つことが大切です。大手でも開発を持つ総合型では困るでしょう。…企業は、つい総合メーカーになりたがるが、これからは厳しいでしょうね』(同)。

宮路氏の主張は、一般的に言われている事とは少し違う。規模が小さい所は厳しく、淘汰・再編の対象になる所が多く出るという予測を否定し、規模の大小では無く、特化を目指さない総合型メーカーが厳しい目に遭う、と発言する宮路氏の言葉は面白い。では、どうして彼は企業規模を問題視せず「特化型・総合型」に注目したのだろうか。特化型が良く、総合型が厳しいと判断したのはなぜなのか。今回はそこに焦点を当ててみたい。

(つづく)

(ライター:菅井)

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