「Xboxの強み」
2001年12月7日付の日本経済新聞に、あるオンラインゲームが来夏にも登場するという記事があった。そのオンラインゲームとは、バンダイの「機動戦士ガンダム」を題材にした「ユニバーサルセンチュリーネット・ガンダムオンライン(仮称)」(ガンダムオンライン)である。だが、この記事で最も注目すべき点は次の一文『対応ハードや価格、発売時期などは未定だが、パソコンやマイクロソフトのゲーム機“Xbox”が有力』であろう。ソニーがXboxを恐れる理由はここにある。
Xboxの最大の特長は通信機能が標準装備されていることだ。その特長があったために「ガンダムオンライン」の供給先は全世界で2000万台以上が普及しているPS2ではなく、Xboxが有力と見られているのだ。もし、このまま「ガンダムオンライン」がXboxでの供給に決まってしまった場合、PS2にとって重大な出来事になるだろう。それは、PS2よりもXboxの方がオンラインゲームのハードとして最も適したハードであると判断されたに等しいからだ。PS2はXboxとは異なり、通信機能があらかじめ備わっているわけではない。Xboxであれば標準装備されている通信機能が、PS2では新たに周辺機器を購入しなければ手に入らないのだ。ユーザーにとって、これは大きな障害だ。これらのことを考慮すると、バンダイが「ガンダムオンライン」をXboxへの供給する確率は高いと言えよう。
こうしたバンダイの判断は、他のソフトメーカーにも波及する可能性がある。現に、バンダイ以外の複数のソフトメーカーには自社のオンラインゲームをXboxに供給する計画がある。アトラスの「真・女神転生オンライン」などはその一例だろう。仮に、このまま多くのソフトメーカーがオンラインゲームを供給するゲーム機にはPS2よりXboxの方が相応しいと判断し、供給を始めたならば「オンラインゲームはXboxで」という流れが生まれてしまうだろう。そうなると、PS2は今後数年で数千億円市場になると予測されているオンラインゲーム市場をみすみす逃してしまうことになる。SCEにとって、これは致命傷になりかねない動きだ。だからこそ、ソニーの安藤社長はXbox脅威論を唱えたのである。
PS2の通信機能の未整備さが、PS2の弱点になるかもしれないと危惧していたのは、カプコンの岡本吉起氏だ。『心配なのは、プレイステーション2がただのスターターキットにしかならなくなるという可能性があること。ハードディスクが出る。さらにモデムも出る。それらを楽しむためにより高額の投資をしなければならないということは、今後発売されるニューハードに対してハンディキャップを背負うかもしれないですね』(P97
「週刊ファミ通 3月16日号」 エンターブレイン
2001)。今回の新聞記事は、正に岡本氏の心配が現実のものになろうとしている前触れと言えるのかもしれない。 |