【コラム】「映画ビジネス始動 ~その必然性と問題点~」Part2
「CG技術」

ゲームからCG映画への進出は必然的とコメントする坂口氏。ゲームの制作現場からはその理由を垣間見ることができる。高性能のハード機の普及により、ソフト開発作業が一層難しくなっている現状をナムコ子会社モノリスソフトの社長杉浦博英氏は『これまで一人でこなした作業を五-六人で処理するようになり、映画制作に近くなった』(日経産業新聞 2001年7月3日)と言い、複雑化しているゲーム制作作業が映画のそれに似てきていると主張する。

制作過程においてゲームと映画が似ているという杉浦氏に対し、映画とゲームはもう境界線が見えないほどに融合していると指摘する映画監督がいる。「写楽」や「梟の城」などの作品を作り上げた篠田正浩氏だ。篠田氏は『映画とゲームはすでに融合しており、ハリウッド映画は非常にゲームソフト化しています。』(日本経済新聞 2000年9月21日)と述べている。

篠田氏がこう話す根拠のひとつには、CGの存在が両者にとって重要であるからではないだろうか。CGはゲームにおいても、映画においても非常に良く多用されており無くてはならないものになっている。篠田氏の映画「梟の城」では『八百二十カットのうち百カットがCG』(同)であり、中でも実際の撮影は困難であった場面ではCGを応用することで、よりリアルに、且つ幻想的な映像にする事ができたという。

ゲームも映画と同じように、CGは必要不可欠である。今はどのゲームでもふんだんにCGが使用されている。ゲーム中に使われているCGが海外から高い評価を受けるゲームも少なくないほどであるから、CGへの力の入れ具合が相当なものである事がわかる。

CGの制作においては、映画とゲームの間には隔たりがほぼ無いと言っても良い。映画のCGであっても、ゲームのCGであっても、同じCGを作り上げるのであるから、作業自体は殆ど変わらないのだ。坂口氏も『映画の製作は、技術面でゲーム製作と大差ない』(LYCOSニュース 「映画“ファイナルファンタジー”、新たな仮想現実の世界を体現(ロイター)」 2001年7月12日(木)14時26分)と述べており、隔たりは無いと強調する。そう考えると、CGを惜しみなく使うゲームから、CGが重要視されている映画に進出するのも当然の成り行きだったと言える。つまり、CG制作技術に代表されるようにゲーム作り自体が映画制作と大差ない状態にあるために、ゲーム作りに生かしてきたノウハウを容易に、映画作りに転用する事が可能であったのだ。このような背景があるからこそ、坂口氏は「ゲームからCG映画への進出は必然的だった」と語ったのである。

結局、ゲームビジネスによって培われてきたCG技術が、映画ビジネスへの進出を必然的にさせる素地を生み出したのである。

(つづく)

(ライター:菅井)

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