「二ヶ月延期」
2001年4月18日、任天堂は今年7月に発売されるはずであった家庭用ゲーム機「ゲームキューブ」(GC)の発売日を9月14日に決定すると発表した。
当初、任天堂は7月に発売すると明言し続けていたが、二ヶ月延期される事となった。これについて山内任天堂社長は「安定的・継続的にGCを供給するために延期するのだ」という主旨の発言をした。同時に山内社長は自社ソフトの開発も遅れていることも明らかにし、これもハード発売延期の一因であることを認めた。結局、GCはソフトの面でもハードの面でも、当初予定の7月発売は困難だったわけである。
一方、気になる価格であるが、5月24日の決算発表の場で公にすることになった。ただ、価格以上に、いや、GCの発売延期以上に、気になることが説明会場であった。それは、山内社長のこの発言だ。
「E3(注)でゲームキューブのソフトを始めて多くの人の前に出す。見た人の半分が評価するのが目標。評価されなかったらゲームキューブ発売棚上げも考える」(2001年4月19日
日経産業新聞)。
評価されなかったら発売棚上げ……。ハードもソフトも9月14日発売に向けて準備し、明確に発売することを決めた後でのこの弱気発言。強気で鳴らす山内社長の発言とは思えないほどだ。そもそも、山内社長は現行機の「NINTENDO64」(N64)を発売した当初は「究極のゲーム機」と形容していたし、マリオの生みの親である任天堂の宮本茂氏が「五年間は使える機器」(1997年6月27日
朝日新聞)と言いつつも、「これをお買いになったら10年間(ゲーム機を)買わなくたって良いわけです。」(「NHKスペシャル 新・電子立国 第4巻
ビデオゲーム・巨富の攻防」 P356~357 著相田茂・大墻敦 日本放送出版協会 1997 (カッコ内は著者の加筆)
)とも言っていたのだ。その人物が、これから発売する、期待のゲーム機の「棚上げ」まで言及したのである。強気の塊とも言える山内社長の弁であるとは、にわかに信じ難い。
なぜ、山内社長はこのような弱気発言をしたのであろうか。そこには任天堂が従来から主張している基本路線に変化があったためではないだろうか。だから、山内社長は「棚上げ」発言をしたのだ。
では、どうして基本路線を変更しなければならなくなったのか。このコラムでは、それを考えつつ、最終的に、任天堂のGCはゲーム業界で生き残れるのかどうかまで検証してみたい。
(注)E3とは、「Electronic Entertaiment
Expo」のことで、世界最大のコンピューターゲームの祭典と言われる。アメリカで開催。
(つづく)
(ライター:菅井) |